現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
高校生のときに感電自殺を図った
高校生のとき、自殺することばかり考えていた。ある日、電気コードの中の銅線を露出させて左胸と背中に貼り付けた。睡眠薬を飲む。タイマーで電気が流れる時間を設定する。コンセントにコードを差し込み、目を閉じた――。目覚めたときに見たのは、慌てふためく母親の姿だった。
このとき、もともと折り合いの悪かった母親から「あんたとはもう一緒に暮らせない」と言われた。両親の離婚後、もう何年も会っていない父親が騒動を知って母親に送ってきたメールには「おカネが必要ならいくらでも払います。だからこれ以上、かかわらないでほしい」との旨が書かれていたという。
タカヒロさん(20歳、仮名)は当時の心境について「それまでは母親も父親も家族だと思っていました。だから、どこかに期待する気持ちがあったんです」と振り返る。しかし、自殺未遂をきっかけに、両親に愛情や評価、思いやりを求めても無駄であることがわかった。期待すれば裏切られる。だから、期待することをやめた。皮肉にもこれを境に自殺願望は急速に収まった。
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