外国人が萌える「ニッポン」はどこにあるのか ゴールデンルートがすべてじゃない

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人は、リラックスするためや逃避するため、買い物をするため、家族や友達と思い出を作るためなど、極めてさまざまな理由で旅をする。エッフェル塔を見に行く人もいれば、バックパックを背負ってラオスの森林を目指す人もいる。動機や行き先がどうであれ、「発見」こそが旅の醍醐味であることは間違いない。

もちろん、京都や東京にもたくさんの発見や刺激がある。しかし、残念なことに近年、世界中の大都市はどんどん似通ってきている。どこに行っても同じ店があり、同じような空気感をまとっている。そして、(これも世界の大都市に共通している問題かもしれないが)、こうした都市は、「外国人が見たい日本」を演出しているきらいがある。

「手つかずの日本」が残っている

一方、山陰や讃岐などには「手つかずの日本」が残っている。こうした場所を訪れることで、外国人は日本に対する先入観を捨て、本当の日本に触れることができる。そこには新たな発見や体験があり、訪れた人に忘れられない思い出、あるいは人生を変えるような感覚を与えてくれる。

ただ、外国人観光客を誘致するには、地元の人たちの努力も必要だ。早急にやるべきなのは、情報冊子の見直しだろう。こうした地域も複数言語に翻訳した冊子を出しているが、たいてい翻訳がお粗末で、まったく役に立たないか、みじんも魅力を感じられない代物になっている。

これは、地方都市に限らないが、日本は冊子を作ったり、複数言語を訳したり、アプリを開発したりすることには熱心だが、外国人は冊子を読みに来るわけではない。彼らは日本を体験するために訪れているのである。それよりは、たとえ言葉が思うように通じなくても、訪れる外国人を心からもてなすことに力を入れるべきだ。

もちろん、ゴールデンルートが悪いわけではないし、訪れた外国人は十分楽しむことができるだろう。が、今後は外国人が「知られざる日本」を体験できるような仕掛けを考えていく必要があるだろう。日本が「観光立国」と標榜できるのは、こうした場所を訪れる深いファンが増えてからだろう。

真木 鳩陸 フリーランス翻訳家、ライター

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まき ぱとりく / Patrick Mackey

米国・オレゴン州生まれ。2004年早稲田大学で留学、2006年オレゴン大学卒業後、日本に移住。兵庫の旅行会社でライター・HPコンテンツ制作担当をした後、大阪の翻訳会社で翻訳家、コピーライター、校訂者を経て、フリーランス翻訳家・ライターに(現在は九州に在州)。『Osaka Insider: A Travel Guide for Osaka Prefecture』『Finding Fukuoka: A Travel and Dining Guide for the Fukuoka City Area』を出版。2016年12月に日本国籍を取得。連絡先:makipatoriku@gmail.com

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