日本企業も巻き込まれる「国際税務の大変革」 BEPSへの対応は?税務ガバナンスは?

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「海外子会社の税務は現地に任せておけばいい。各国の税法に合わせて適切に処理しているのだから――」

そう考えている経営者やCFO、税務担当者がいたら、いますぐ認識を改めたほうがよさそうだ。国際税務は、かつてない激変期を迎えているからだ。「税」に対する人々の考え方を、時代が変えつつあると言ってもいい。

近年、企業活動がグローバル化する中で、法の抜け穴を利用して租税回避行為を行う欧米の巨大企業がメディアでたびたび取り上げられている。そこでOECDはBEPS(Base Erosion and Profit Shifting=税源浸食と利益移転)プロジェクトを立ち上げて、この問題に国際協調して対処していくことを決めている。

BEPSに関しても「我が社は租税回避行為をしていないから大丈夫」と無関係を決め込む日本企業は少なくないが、それは早計だ。デロイト トーマツ税理士法人の野邑和輝氏は、次のように解説する。

デロイト トーマツ税理士法人
パートナー
野邑和輝

「BEPS行動計画13に基づき、大規模多国籍企業の親会社にはすべての子会社のグループ内取引価格に係る税務情報を文書化する義務が生じ、さらにこれらの情報は親会社所在地国の税務当局だけではなく、子会社所在地国の税務当局にも提供されていくこととなっています。従前、日本企業の多くは、子会社が現地で税務を完結させる”分権型”。しかし、今後は本社がコントロールする”中央集権型”に移行していかざるを得ません。租税回避がなかったとしても、本社がグループ全体にガバナンスを利かせていなければコンプライアンスに違反することも起こり得ます」

つまり、冒頭のような現地子会社任せの税務処理は許されなくなる。そもそも、本社のガバナンスが利いていない状態は、とても危険だ。たとえば子会社が現地の税務当局から申告漏れを指摘されていたのに、本社はその情報を把握しておらず、新聞沙汰になって初めて知るなどのケースも考えられる。

「税務×テック」が可能にすること

分権型税務が抱えるリスクは、コンプライアンスの問題だけではない。税務を支える仕組みが分権型のままでは、BEPS対応で新しく発生する業務をさばききれない。トムソン・ロイター・ジャパン、タックス&アカウンティング部門の伊東礼一氏は、「税務の現場から悲鳴があがっている」と指摘する。

トムソン・ロイター・ジャパン
タックス&アカウンティング
シニア ソリューション コンサルタント
伊東礼一

「BEPS対応では、親会社と子会社間だけでなく、子会社間の取引についても情報を収集して文書化する必要があります。分権型企業の税務担当者は、そのことを一つひとつ子会社の税務担当者に説明して、セキュリティを担保しつつ国外関連取引にかかわる情報、届いた大量の情報を整理しなくてはいけません。マンパワーでの対応には限界があり、通常業務にも支障が出かねない状況です」

ここで注目されるのがテクノロジーだ。

国際税務分野にテクノロジーの力を使えば、膨大な量の作業を効率的に処理できるだけでなく、国内外の支社のデータ収集と集約過程を構造化することもできる。標準化され、自動化されたシステムを構築すれば、メールや電話などで支社に情報更新依頼をすることもなく、本社の税務部門において税務プロセスが可視化されることになる。つまり、中央集権型の税務体制を築き、人的コストを大幅に下げることを可能にするのだ。

そのような専門知識を駆使して改革を推し進める人材はTaxologist (タクソロジスト)と呼ばれ、新しい税務プロフェッションとして注目されている。

では、理想の中央集権型税務を実現するテクノロジーとはどのようなものか、そして税務体制の改革とはどのように進めればいいのか――。続きは以下の無料ダウンロードから。