追い詰められたリーマン、韓国政府系銀行との資本増強交渉が不調に終わる

追い詰められたリーマン、韓国政府系銀行との資本増強交渉が不調に終わる

サブプライム関連の損失が拡大し、資本不足に陥り、動向が注目されていた米証券大手のリーマン・ブラザーズが10日、第3四半期(6~8月期)の決算を発表したが純損失は39億ドルで、第2四半期(3~7月期)の27億ドルの赤字に続く2四半期連続となった。第3四半期までの累計で純損失が62億ドルに膨らんだ。

第3四半期の評価損の総額は78億ドル、ネットでは56億ドルだった。主なものは、住宅ローン関連の評価損が53億ドル、商業用不動産ローン関連が17億ドル。主なリスク資産の処理としては、住宅ローンは31%削減し、172億ドルになったが、高い英国の案件40億ドルのブラックロック(資産運用会社)への売却が決まっており、これを含めると47%削減の132億ドルになるとしている。商業用不動産ローンは18%削減し、326億ドルに、ハイイールド(投資不適格)の買収ファイナンスは38%削減して71億ドルになったとしている。

他にもリストラ策として、問題を多く抱えているとされる商業用不動産関連の資産の大半の250億ドル~300億ドル分を09年の第1四半期に別会社に分離するとした。いわゆるバッドバンク方式だが、本体から切り離せば、時価評価しなくても時間をかけて処理できるメリットがある。

投資運用部門も株式のおよそ55%相当を売却する方針だ。アセットマネジメント、プライベートエクイティなどの事業で、2003年に26億ドルで買収した運用会社・ニューバーガー・バーマンも含まれるという。アセットマネジメント、プライベートエクイティなどを含む。純資産額で30億ドル以上の増加を見込む。

6月の増資の結果、8月末の株主資本は284億ドルで、長期資本は1430億ドル、Tier�(中核的自己資本)比率はおおよそ11%になるとしている。総資産は6000億ドル。

資産の中身を見ると、依然として厳しいことがわかる。8月末で住宅ローン関連債権(ローンと証券化されたものを含む)172億ドルのうち、米国のAlt-A(所得証明などの書類がプライムの要件を満たさないローン)とプライムの残高合計が59億ドル、サブプライムや二番抵当のものが16億ドルあるほか、欧州の住宅ローン関連債権が76億ドルある。商業用不動産ローン関連326億ドルのうち、メザニン(劣後)ローンが17億ドル、不良債権が66億ドル、証券化商品が43億ドル。

ディック・ファルドCEOはアナリストたちに、「リーマンの158年間の歴史のなかで、もっとも、厳しい時期にある」と、語ったという。

一方、増資先として期待されていた韓国の政府系金融機関であるKDB(韓国産業銀行)との交渉は不調に終わった。KDBは日本で言えば、旧長期信用銀行や現在の政策投資銀行のような韓国の産業育成・高度成長期を担ってきた銀行であり、2011年に完全民営化の計画で、グローバルな投資銀行を目指している。しかし、今回、買収価格で折り合いが付かない中、市場環境も依然として厳しいことを理由に、決裂した旨、海外メディアが報じている。

リーマン・ブラザーズは今年3月のベアー・スターンズの破綻以降、価格が下落している問題債権の削減や資本調達に奔走してきた。6月には40億ドルの普通株と20億ドルの強制転換型の優先株を発行、4月にも40億ドルの優先株を発行していた。2007年後半には60ドル台だった株価はしかし、ここへきて、株価は今年の5月の40ドル台から、下落を続け、現在7ドル台まで急落した。S&Pは問題資産の分離に伴い追加資本が必要になる可能性を指摘し、現在のA格付けを格下げ方向で見直すと発表した。

問題は、ベアー・スターンズ救済のときのJPモルガン・チェースのような買い手が現れるかどうか。政府関連企業であり、市場全体のアンカー役であるファニーメイやフレディマックは助けても、民間金融機関へ直接支援の手を差し伸べることは、米政府はしない。FRB(連邦準備制度理事会)と連銀は資金繰りの手助けはしても、資本不足を埋めることはしないだろう。

しかし、拡張にかなりアグレッシブだったKDBとの交渉が不発に終わったことに見るように、買収を決断することは海外の金融機関にとっても難しい。なぜなら、保有資産に買い手が付かない、ないしは価格下落が続いており、損失がまだ続くことがほぼ見通せる上、リーマンのような証券会社は手数料収益と資産の売買で稼ぐ、回転商売であり、商業銀行のように、資産から安定的に生まれるキャッシュフローがほとんどない。そして、こうした商売のビジネスモデル、すなわち、ローンを組成して、証券化し、転売するという仕組み自体が崩壊してしまったために、「リーマンのノウハウやそれを持つ人材自体に価値があるのかどうか疑問」(メガバンク幹部)、というのが業界関係者の見方だからだ。
(大崎明子 =東洋経済オンライン)
(写真:六本木ヒルズの日本法人 撮影:風間仁一郎)

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