苦節10年「東京ポッド許可局」が人気の理由 自主制作から地上波へという「奇跡」

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マキタ:結果論でもあるんだけど、3人の関係性が大事で、題材選びや切り口で、それぞれの得意分野が生きた。例えば、おたくのプロレスならこうなの、アニメならこんな見立てができるとか、音楽だったらこうだよとか、相互が乗り入れるような転がし方が生まれました。

タツオ:ラジオって3人の関係性のごまかしがきかない。むしろ関係性の蓄積が、その時のフリートークに出るので、利害以外の絆のある3人でやっているのが、嘘が出ないぶんいいのかなと思います。

マキタ:あと敬称を略したことですね。これは結構、勇気がいります。

鹿島:僕らは芸能界の一番外にいたから、「たけしさん」と言ってるほうが、くすぐったい気がしてたんですよ。それよりは「昨日ビートたけし見た?」というノリを大事にしました。まあ芸人の自覚としてどうなんだという話はありましたが……。

サンキュータツオ/1976年、東京都生まれ。お笑いコンビ「米粒写経」の1人。アニメなども理屈で語る自称・日本で唯一の学者芸人。専門は日本語学。著書に『国語辞典の遊び方』(角川学芸出版)ほか(写真:オフィス北野提供)

マキタ:語る内容も微妙で、ちょっと評論めいたこともやるから、「たけしさん」と言ってると、ちょっとねじ曲がっちゃうじゃないですか。だから、そこは律して敬称略でいきましょう、と決めましたね。ただ今は地上波になり、自分たちのポジション、位置が変わってもいるので、さすがに敬称をちゃんと付けますけどね。ポッドキャスト時代だからこそできたことです。

鹿島:変わった点といえばそこでしょうね。そこは僕ら3人の仕事の変化で変わったけど、他は変わってないですね。

タツオ:僕は、番組に来ると、それぞれみんなが仕事の質も変わっていくなか、地元に帰って友達に会っている感じがします。みんなそれぞれ働いているフィールドが違うから。リスナーもこの地元を応援してくれているという感じがしています。

そのまま地上波へ

タツオ:リスナーもですけど、スタッフにも愛されてる番組です。そもそも長田(ゆきえ)プロデューサーは、ずっと企画をTBSに出し続けた人。「自主制作のラジオをそのまま地上波へ」って、勇気のいることだと思うんです。さらに喫茶店で収録してたときと同じ環境も整えてくれてた。

鹿島:今、わざとBGMで流してます。喫茶店のしゃべり声を。

マキタ:番組のフォーマットは変えずに、「そのままでいいですよ」って。

タツオ:僕らに自由を残してくれたんですよ。

鹿島:そこまで理解してくれた人に出会えたのも奇跡です。2013年に地上波になったんですけど、実は、それがなかったら、もうやめようかという話になってたんですよ。お互いのスケジュール調整が、いよいよ限界にきて……そのタイミングでTBSラジオの話がきて、公式な仕事になりました。このタイミングもまさに奇跡でした!

(構成/ライター:本山謙二)

※AERA 2017年10月30日号

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