全男性が持っている「痴漢トリガー」とは何か 満員電車で作動すると、もはや制御不能に

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――薬物やアルコール、ギャンブル依存症に似ていますね。

そのとおりです。いけないことだとわかっていてもやめられない。これが最後、あと1回だけと言って繰り返し、行為がエスカレートしていく。まさに依存症です。逮捕されたときに「捕まって安心した」と言う痴漢も少なからずいます。もはや自分ではやめられず、逮捕されてほっとするのでしょう。ただし薬物やアルコールの依存症との違いは、自分の健康を害する行為ではなく、必ず被害者がいるように他者の健康や尊厳を踏みにじる行為であるということです。

――逮捕されればもう痴漢をしないのですか。

逮捕されても示談で解決し会社や家族に知られずにすめば、また痴漢に走る人もいます。ほかの依存症と同様、再発防止に向けた治療プログラムの受講が必要と感じます。

「痴漢スイッチ」が入らないような工夫が必要

――男性の誰もが痴漢になる可能性があるとしたら、それを防ぐためにはどうしたらよいでしょう。

日常生活で過度なストレスを感じている状態で、偶然女性のお尻に触れたことで「痴漢スイッチ」が入ってしまうのであれば、そのスイッチが入らないようにすることです。満員電車を避けるか、電車内では必ず座るようにするか、常に両手でつり革を握るなどの対処法が必要です。

とはいえ、日本の満員電車でこれを常に実行するのは難しいことです。むしろ過度なストレスをためないように、ストレスを発散する場や相談する相手を複数確保するなど、対処法を持つことが賢明でしょう。これは努力して身につけることができる人間の処世術です。また、もし読者の中に罪の意識を感じながら痴漢をやめられない人がいるなら、痴漢は依存症であり、治療でやめられるということを知ってほしい。今ならまだ間に合います。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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