サッカー界からの助っ人はバスケを変えるか チェアマンらが語る「本音と展望」

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島田:そしたら、今の状態では運営していけないから、チームを潰すしかないという話が出てきた。短期間だけのかかわりでしたが、チームに対する愛着のようなものも感じていたこともあって、反射的に「潰すのだけはやめましょうよ」という言葉が出てきたんです。「だったら、1年でもいいから社長をやってくださいよ」と言われて、「潰すか、社長をやるか」の選択を迫られた。あのとき、株主たちが「潰す」という話をしていなかったら、私は遅かれ早かれ身を引いていたと思います。

後になって、「ジェッツが消滅したのは、あの島田が“逃げたからだ”」なんて言われたら、嫌じゃないですか。それで「わかりました。1年だけお引き受けします」という返事をしました。その後も「もう1年だけ」と言いながらズルズルと続いてきて、気がついたら6年経っていた。そういう経緯があるので、私がリーグのバイスチェアマンを務めてもいいのかっていう気持ちがあるんですよ。

クラブ経営者とバイスチェアマンの兼務

大河:今シーズンから、島田さんは千葉ジェッツの代表とB.LEAGUEのバイスチェアマンを兼務することになった。それについて、利益相反ではないかという人もいます。もちろん、そうならないように気をつける必要はある。でも、利益相反の可能性があるから兼務できないポストかと言うと、そんなことはない。やり方に気をつければいいだけの話です。二刀流で大変だろうけど、やはり島田さんみたいな優秀な人がリーグ発展のためにひと肌もふた肌も脱いでもらわないとね。

島田:クラブ経営とリーグ経営はまったく違います。ジェッツだったら、「これやろう、あれやろう」と社長の私がその場ですぐに決めて、何でもできます。一方、リーグは合議制で決めていく組織ですから、やり方はまったく異なります。もちろん、大きな組織を動かしていくという魅力はあるでしょう。と同時に、各方面に配慮しながら調整しつつ動かなくてはいけない。いいところもあれば、難しいところもあるでしょうね。

大河:たとえば、川があってね、流れる方向は同じでも右岸から川を見るのと左岸から見るのとでは、見え方が変わってくる。リーグとクラブも同じだと思うんですよ。両者とも、バスケがもっと盛んになればいい、事業がもっと大きくなればいいと考えている。だけど、違う立ち位置にいると、見え方も違ってしまう可能性がある。別にケンカしているわけではないんだけど、行き違いが生じたりね。

そんなときに、島田さんのような「両岸」から景色を見られる人、両者の代弁者としてこの行き違いを埋めてくれる人材が必要になる。こんなこと言ったら怒られちゃうかもしれないけど、チェアマンの自分としては、島田さんがバイスチェアマンになってくれたのはすごく都合のいい話でね……。

違う立ち位置にいると、見え方も違ってしまう可能性がある(写真:矢木隆一)

島田:いや、実際、私もそうだと思いますよ。リーグの中にクラブ目線で物事を見られる人がいて、チェアマンを支えていくことができればうまく機能するでしょう。クラブ側からリーグに「俺たちの気持ちが理解できるのか?」という声が届けられたとき、「わかりますよ」と答えることができれば結束を固められるはずです。ですから、調整役としての役目は自覚しています。

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