通信業界の信用力は安定的、ただ携帯への依存は当面続く《スタンダード&プアーズの業界展望》

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固定電話の需要は引き続き低下、光アクセスの収益貢献には要時間

 固定電話の需要低下は引き続き深刻である。NTTの加入電話(NTTのサービス総合デジタル通信網であるINSネットを含む)の件数は、2008年6月末現在で、前年同期の8.8%減の4,503万人になった。携帯電話の普及、KDDIやソフトバンクテレコムの直収電話サービスや、インターネットプロバイダーによるIP電話サービスとの競争などが主因だ。この他に、NTTの光ファイバー網によるIP電話サービス「ひかり電話」にユーザーが移行していることも一因である。

 NTTは光アクセスサービス市場で圧倒的優位を誇っている。2010年度末までに2,000万世帯に同サービスを提供するという高い目標を掲げて、年間6,000億~7,000億円を光IPネットワークに投資している。しかし、まだ先行投資段階の域を出ておらず、収益に貢献し始めるには時間がかかるとみている。ソフトバンクの固定通信事業の収益は「おとくライン」サービスを個人市場から法人市場にシフトさせたことが奏功し黒字に転じたが、本格的な収益貢献には遠い。KDDIの固定通信事業は赤字が続いている。固定通信事業の不振を携帯電話や他の事業で補う構図は来期以降も続くだろう。

  日本 アジア・太平洋 欧州 米国
AA NTT
NTTドコモ
中華電信(台)    
AA−        
A+   シンガポール・テレコム
(シンガポール)

チャイナ・モバイル
(香港)
   
A KDDI テレコム・コーポレーション・オブ・ニュージーランド
(ニュージーランド)

テルストラ・コーポレーション
(豪)
ベルガコム
(べルギー)
ベライゾン・コミュニケーションズ
(米)

AT&T
(米)
A−   KT
(韓)

テレコム・マレーシア
(マレーシア)
ボーダフォン・グループ
(英)

フランス・テレコム
(仏)

スイスコム
(スイス)
 
BBB+     ドイツ・テレコム
(独)

テレコム・オーストリア
(オーストリア)

テレフォニカ
(スペイン)
コムキャスト
(米)
BBB   PCCW-HKT テレフォン
(香港)
テレコム・イタリア
(伊)
 
BBB−   ハナロテレコム
(韓)
   
BB+   LGテレコム
(韓)

フィリピン長距離電話
(PLDP、フィリピン)
   
BB ソフトバンク     スプリント・ネクステル
(米)
*格付けは2008年9月8日現在

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