企業価値を上げる手法「IR戦略」とは 新ルールの導入に対応できていますか?

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公益社団法人 日本証券アナリスト協会副会長(野村證券 金融経済研究所長)を務める許斐潤氏  
日本証券アナリスト協会が毎年実施するディスクロージャー優良企業選定制度。来年にも予定される新たなルール導入への対応が織り込まれ、企業側の取組を評価するようになった。今後のIR戦略をどのように構築していけばいいのか。同協会副会長の許斐(このみ)潤氏に話を聞いた。

今年で23回目を迎えたディスクロージャー優良企業選定制度。金融商品取引法の改正に応じ、来年からいわゆるフェア・ディスクロージャー・ルール(以下FDルール)が導入されることとなった。これは公平な情報開示のため、未公表の重要な情報を一部の証券アナリストや機関投資家などに選別的に開示しないよう、企業側に求めるものだ。

審査の結果、今年度は計20社が受賞した。FDルールの導入を控え、企業から開示される情報がより限定的になる懸念があることなどを踏まえ、評価項目の新設・変更がなされた。今回の選定結果について、日本証券アナリスト協会副会長でディスクロージャー研究会の座長を務める許斐(このみ)潤氏は次のように語る。

「上位企業においては情報開示の後退はほとんどないものの、全体的には、月次情報の開示やアナリストとのミーティングを取りやめた企業もあるなど情報開示の後退が散見されています。また、コーポレートガバナンス・コードについての説明状況は総じて改善しています。さらに、上位に評価された企業には、『統合報告書』を作成する事例が多いです。企業による情報開示は基調的には向上傾向にありますが、FDルールの導入等に伴い情報開示が後退するおそれがあるため、当研究会としては、そうならないように、企業に対しフィードバック等の際に働きかけていきたいと思います」

基準の策定から選定まで、証券アナリストが実施

ディスクロージャー優良企業選定制度は、企業のディスクロージャーの促進・向上を目的として1995年から開始された。選定にあたっては、総勢500名超の証券アナリストらによって「経営陣のIR姿勢」「説明会等における開示」「フェア・ディスクロージャー」「コーポレートガバナンス関連」「自主的情報開示」という客観的な評価基準をもとに選定される。

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