ハワイ・欧州にも飛べるLCC「スクート」の実力 大手エアラインも焦る、LCC新時代は混戦模様

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日本勢でもANAホールディングス傘下のバニラエアが、米国西海岸行きなど中長距離路線への参入を検討している。787を大量に保有するANAグループであることを考えれば、スクートと同様、787による運航となる可能性もある。

ノルウェジアン・エア・シャトルは今欧州で最も勢いのあるLCCだ(写真:Norwegian Air Shuttle)

今それ以上に台風の目となっているのは、欧州だ。注目株がノルウェーを拠点とするLCC、ノルウェジアン・エア・シャトル。2013年に787で欧州と米国を結ぶ大西洋路線に参入し、価格破壊を起こしてきた。今年9月に就航した英ロンドン―米シアトル線の最安価格は、片道179ユーロ(約2万3000円)だ。

欧州大手が傘下に続々とLCCを設立

焦ったのが、欧州の大手だ。英ブリティッシュ・エアウェイズなどを傘下に持つインターナショナル・エアラインズ・グループは今年3月、スペイン・バルセロナを拠点に長距離LCC「レベル」を立ち上げ、6月から米国西海岸路線を就航。運賃は片道99ユーロからの設定だ。

スペイン拠点の「レベル」は、LCCとしては珍しくすべての座席にモニターがついている(写真:LEVEL)

独ルフトハンザグループでは、傘下のLCC「ユーロウイングス」が2015年に長距離線へ参入。ドイツ・ケルンから米国やタイなどへのレジャー路線を運航する。

仏エールフランスは、出遅れたものの今年12月にLCC「ジューン」を飛ばし始める。当初は欧州域内路線が中心だが、来年には南米への就航を予定する。運賃は249ユーロから。18~35歳の「ミレニアル」世代を対象としており、若者を意識したブランドにしたい考えだ。

欧州での競争激化の背景には、大西洋路線が片道7時間前後と、10時間以上の太平洋路線よりも短く、LCCが参入しやすいということがある。とはいえ、先行したノルウェジアンもまだ利益がついてきていない。「中長距離LCCについては、”勝利の方程式”がまだ誰にもわからない。皆が試行錯誤を始めた段階だ」(日系LCC幹部)。

短距離LCCが各地で仕掛けた航空競争は、さらに新たなステージへと突入した。大手もLCCも、生き残りの策に頭を悩ませる日々が続きそうだ。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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