政党の企業化で日本の民主主義は危機状態だ 政治家になりたい者の救済組織でしかない

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政党はもはや党首の人気や知名度頼み、浮動層狙いに。人気者同士のツーショット?(写真:ロイター/アフロ)

民進党の事実上の解体と「立憲民主党」の旗揚げで、総選挙の対立構図が固まってきた。

安倍晋三首相の衆院解散宣言後の一連の政界の動きは、自民党に対抗する勢力であったはずの民進党の取り返しのつかない自滅であり、「希望の党」誕生に象徴される保守勢力の肥大化だった。同時に起きたのが、選挙で「当選者」を出すための「新党」の乱立だった。都議選の勢いに乗る小池百合子都知事が「希望の党」を作れば、それに便乗しようと民進党がすり寄り、はじき出された左派勢力が「立憲民主党」を作る。国政を担うはずの政党はいまや政治家願望者たちの救済組織へと大きく変質してしまった。

政治学の教科書などで「政党」は「主義主張を同じくする者が権力獲得や政策実現を目指して結成する集団」であるとか、「選挙を通じて権力を獲得し、政策を実現しようとする集団」などと定義されてきた。つまり、政党は社会の一定の集団や階層を代表し、その利益(政策)を実現するために選挙で多数獲得を目指す、社会的存在なのである。というか、そういう存在だった。

政党は企業化、商品は「人気者の党首」と「バラマキ政策」

ところが「希望の党」や「立憲民主党」の一連の動きは、こうした公的機能、役割とはまったく無縁で、1人でも多く当選させるためのにわか作りの選挙向け組織であり、そこに集まるのは議員になりたいという願望の強い人たちである。これはもはや伝統的な政党とは別物である。

米国のリチャード・ニクソン元大統領は、ウォータゲート事件で大統領辞任に追い込まれたこともあって評判はいま一つだが、政治家としての見識は高いものを持っていたことで知られている。その著書『Leaders』(邦題『指導者とは』)には、「経営者は今日と明日を考えるが、指導者は明日の一歩先を考えなければならない。経営者はプロセスを、指導者は歴史の進路を扱う」と書いている。

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