テーマパーク化する「鉄道系博物館」の問題点 展示物は娯楽性重視、学芸員は専門知識不足

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近年増えてきた鉄道系博物館は子供をターゲットにしていることが多い(撮影:風間仁一郎)

博物館とは学びの場所だ。近年各地で設立された鉄道系の博物館も、本来なら学びの場所のはずである。しかし、日頃交流のある学生や、たまたま仕事で顔を合わせた鉄道好きを自称する大学生などに鉄道系博物館での学びについて聞いてみると、「学べない」との返事や「学べる要素がない」とのつれない返事が返ってくる。揚げ句に「子供の遊び場だから行かない」が付け加えられることすらある。

鉄道系博物館が標榜する「学び」というのは何なのであろうか。一部の鉄道好きが「学べない」と感じる要因を考えてみよう。

収蔵物の背景を説明しているか

博物館とは、欧州の富豪や権力者などがその権力や経済力によって古今東西から収集した珍品陳列展示館などがその発祥といわれている。世界の珍しいものを集めて展示して見物人から見学料を取る、権力や国力を示すものが、いつしかその収蔵物、展示物にその素性を語らせ、それを知識や知見として見学者に与えるという役割を果たすようになり、博物学の進化に伴って大衆の教育、娯楽のための装置となってきたものが博物館といえよう。つまり、貴重なモノの保管庫としての役割も持っているが、モノの情報や背景を示さずに保管、展示を行っているだけなら単なる収蔵庫にすぎない。

収蔵・展示物に対する保管、展示、新たな収集の役目を持つのが「学芸員」といわれている。国家資格の学芸員に要求される知識と技量は、その収蔵物に対する保存も含めた知識と、博物館としての重要な役割でもある「教育」が実現できる能力を持つことであるが、担当する収蔵物に関連した学術的基礎知識や経験知識がないと十分に教育者としての役割を果たせない。単に資格者の頭数をそろえるためだけでは、ただの要員にすぎない。

知らないことは語れないし、誰でも知っているようなレベルの内容を語っても意味をなさない。基礎知識に立脚して、新たにその収蔵物やその背景史実などについての研究・調査などの学術活動を行い、それを実践して初めて見学者が満足しうる博物館にふさわしい展示が可能になるのではなかろうか。

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