原油価格が「1バレル60ドル台」まで戻る理由 「いつのまにか」底打ち、ジリジリと上昇中

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では、どこか。世界の標準は「ブレント原油」である。WTI原油はあくまで米国内のドメスティックな価格指標であり、むしろ先物市場のベンチマークという意味合いが強くなっている。一方、ブレント原油はOPEC(石油輸出国機構)加盟国・非加盟国の協調減産合意の効果が直接的に反映されるため、価格水準はWTI原油よりも高く、また上昇基調が鮮明だ。

すでにブレント原油は一時58ドル台まで上昇

9月25日のブレント原油は先物市場で一時58.37ドルまで上昇、2015年7月以来の高値をつけた。過去の57.30~57.50ドルのモミ合いゾーンを明確に上抜ければ、きわめて強い相場展開に移行するだろう。そのような動きになるかは、やはりOPEC加盟国とロシアなどの非加盟国の今後の産油政策次第ということになる。

9月22日にはウィーンで合同閣僚監視委員会が開催されたが、注目が集まっていた来年3月末に期限を迎える協調減産の延長については、原油相場が最近50ドル台を維持していることから、延長の勧告が見送られた。またロシアのアレクサンドル・ノバク・エネルギー相は会合終了後、「減産を延長するかどうかについて、来年1月までは決定しない」との見通しを示している。

ロシアは減産拡大には消極的とみられているが、需給均衡に対する市場の期待は依然として高いといえる。一方、会合では、世界的な原油在庫が低下するなど減産の効果が表れているとの認識が示された。ただし、経済協力開発機構(OECD)加盟国の在庫水準が5年平均と比較した超過幅が1月の3億4000万バレルから8月は1億7000万バレルにまで劇的に低下したとされており、減産効果は鮮明である。

会合の議長を務めたクウェートのアル・マルズーク石油相は、「世界の原油在庫をOPEC目標の5年平均水準に削減するうえで減産が役立っている」としたうえで、「前回の7月会合以降、石油市場は著しく改善した。市場は間違いなくリバランス(再均衡)に向かっている」との認識を示している。またベネズエラのエウロヒオ・デルピノ石油鉱業相は、「今年11月のOPEC会合で結論を出すことになる」とし、減産延長を含め「あらゆる案が検討されている」としている。

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