「定年後に家を買う」は意外と賢明な選択肢だ 持ち家派vs賃貸派論争には第3の道がある

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基本的に、老後暮らす分の家賃は現役時代に確保し、定年を迎えることが求められます。公的年金に、家賃手当は含まれていないからです。ただ、問題は自分の老後が何年続くかを誰も予想することはできない点にあります。

65歳まで働いたとして、残りの人生は10年かもしれないし、25年かもしれないし、35年かもしれません。統計的には、65歳の男性が約19年、女性が約24年の老後があるとされます(厚生労働省「平成28年簡易生命表」)。しかし、言い換えれば、半数はそれより老後が長いということになります。今後、さらに平均寿命が伸びることも予想されます。したがって、統計も当てにして「ぴったり」予算確保することには不安が残ります。

すなわち、実際の老後がスタートする前に、老後の家賃を全確保しようにも、老後が何年続くかによって確保すべき金額が異なってくることが、「生涯賃貸派」の問題なのです。

「生涯賃貸」に必要な資金はわからない

仮に、「月8万円の部屋に住む(年約100万円の住居費)」ケースで考えてみましょう。この場合、老後が20年だとしたら合計約2000万円が必要です。ただ、これでは女性の老後の平均にも足りていませんから、やや長くみて30年老後があるとすれば、約3000万円必要になります。老後を何年と設定するかによって、必要額は大きく異なるわけです(敷金礼金、更新料等の諸経費、家賃の値上げなどは考慮していないので実際にはもっと必要)。

普通に老後を過ごすための余裕資金として資産形成を行うことすら、一般的には簡単ではありません。そこに「2000万円か3000万円かよくわからないけど、追加で家賃分も貯めてね」と追い打ちをかけるのが、生涯賃貸派を目指すためのマネープランなのです。

現役時代に住宅ローンは組みたくない。でも、老後に不確定要素が多い賃貸派も避けたい――。そうなると、第3の道として浮上するのが「定年時点で一括で家を買う」というプランです。

次ページ「定年時点で一括で家を買う」のメリット、デメリット
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