進化し続けてきたパナソニックの車載事業
AIS社の車載事業は、社会の要請という視点から「快適」「安全」「環境」という3事業領域に分けられる。そのうち「快適」「安全」事業の拠点となっているのが、長野県にある松本拠点だ。
松本ではグローバルマザー拠点として最先端の設備・生産技術を擁し、車載情報通信システム(In-Vehicle Infotainment : IVI)やeコックピット、先進運転支援システム(Advanced Driver Assistant System : ADAS)、電動化といったカテゴリーの製品群がつくり出されている。クルマがエレクトロニクス化する中で、欠くことのできない幅広い製品・システムを取り扱っており、いずれも需要が急拡大している。
当然のことながら、これらの製品・システムには、長年にわたりパナソニックが培ってきた家電技術が生かされている。たとえば1939年の、車載カーラジオ1号機の開発。その後もカセット、CD、DVD、Blu-Rayなど家庭で新しいメディアが普及するのに合わせて、車載機も商品化してきた。カーナビゲーションやヘッドアップディスプレイ、電子ミラー、さまざまなセンシング技術なども、AV機器や白物家電に用いてきた技術を高いレベルで応用したもの。こうした確たる技術を基に、今までにない製品・システムを市場にいち早く送り出す「ファースト・イン・マーケット」を実践し、各自動車メーカーからそのアイデアやコンセプトだけではなく、品質面でも信頼されるTier1(一次サプライヤー)であることがAIS社の強みだ。しかも今日では、自動車メーカーと一緒に「快適」「安全」をサポートするものづくりを企画の段階から行うようにもなってきているという。
一方、AIS社の車載事業の海外生産拠点は、米州、欧州、中国、アジアの4エリア、20拠点以上。これらを取りまとめ、ものづくりのトップランナーとして工法・設備などの先行開発・立ち上げを行い、海外への展開を図ると同時に、現地の情報や顧客からの要望を収集・分析し、そこから解決策や新たな付加価値を創出して海外拠点に再発信するのが、グローバルマザーの中枢である「グローバル生産革新センター」だ。
インフォテインメントシステム事業部 グローバル生産革新センター 所長
小林 彰
このグローバル生産革新センターの小林彰所長は「ものづくりがどんどん高度化、複雑化していく中で、われわれが最も重要視しているのは、国内外すべての生産拠点の品質の高位平準化です」と言う。
AIS社が提供する車載製品・システムのラインナップが拡充していく上で、プロダクツの安全性、信頼性といった品質はつねに担保されなければならない。自動車の場合、たった1つの小さな部品でも不良が発生すれば、それは即座に人命にかかわる大問題に発展しかねないからだ。そのため、松本拠点がモデルとなって、ノウハウを積み上げ、さらに新しいものづくりに挑戦していく必要がある。
この課題を乗り越えていくために、松本拠点では生産プロセス開発、生産システム開発等に携わる人材を積極的に採用しようとしている。「松本拠点は車載事業の中核。エンジニアであれば、ここで働くことを意気に感じるはずです」とグローバルマザーとしての松本拠点のプレゼンスを訴える。
グローバル車載生産技術人材に求めるものとは
AIS社ではキャリア採用の若手社員も第一線で大いに活躍している。同センター生産革新部の望月雅矢主任技師も、その1人だ。実は、同氏は今年8月に中途入社したばかり。それでも、その実力と本人の熱い思いが評価され、入社1カ月後には欧州の重要拠点の1つ、チェコへ2週間の出張の機会を得た。
以前は他の電機メーカーで電子部品のプロセスエンジニアとして働いていたという望月氏は、先端的な要素技術開発および工法の検証などを行う現在の仕事について「前職とは多少フェーズが違うものの、工法を開発するという部分では共通するものがあります」と、これまでの経験を生かした活躍ができることを喜んでいる。
望月 雅矢
「転職理由は、おもに3つありました。まず、エレクトロニクス系の成長分野である車載事業に携わりたいということ。次に幅広いキャリアを積みたいということ。そして、世界中のビジネスパートナーと仕事をするチャンスを得たいということ。この3つをすべて満たすのがAIS社だと、改めて実感しています」と今の心境を口にする。
同じく生産革新部の久門哲也主任技師は、03年に新卒で入社した。当初2年間は横浜拠点で携帯電話関係の生産技術の業務にあたっていたが、その後、一貫して車載事業に従事。現在は、望月氏と同じ部署で確立された技術を生産設備として具現化する業務を担いながら、中国、マレーシア、タイ、チェコ、メキシコの海外5拠点のサポートも行っている。「昨年1年間の出勤日で全員がそろって顔を合わせたことは、ただの1度もありません。つねにメンバーのだれかが海外拠点の支援に出向いている状況です。海外志向の強い技術者なら願ってもない環境だと思います」と言う。
久門 哲也
そんな久門氏が近年感じているのは、手掛ける仕事の内容が大きく変わってきていることだ。たとえば「従来、生産設備の開発や立ち上げなど一連の業務は、それぞれの工場で行ってきましたが、最近は国内外工場と協業することが多くなりました。今後ますますパナソニックの他カンパニーの人たちとも一緒に仕事をする機会が増えていくと思います。そうした中で、これまで以上の安全性、品質、効率性の向上を図る生産設備の自動化の開発を立ち止まることなく進めていく必要があります。多忙ではありますが、多様な文化・価値観を持つメンバーとともにミッションを遂行し、イノベーションを起こしていく過程に、十分やりがいを感じていただけるはずです」と熱く語る。
クルマの電子化、電動化、自動化。まさに社会の変革を先取りしているAIS社だからこそ、ここで働く人材も未来対応型の能力が求められる。小林所長が待望するのは「専門のコアがしっかりあり、かつ商品を実現し量産するためのプロセスを総合的に俯瞰できる視点」の持ち主だ。
「われわれは実装と組み立ての世界から、材料プロセス型のものづくりへと変わっていかなければなりません。また、工場内の設備をすべてIoT化することで生産プロセスを劇的に効率化したり、ビッグデータとAIの活用で生産ラインの予兆管理を行ったりといったスマートファクトリー化にも対応しなければなりません。そうしたものづくりの現場を、一段と進化させていくための工法と設備の開発ができる人材が不可欠なのです」(小林氏)

もちろん、テクニカルスキルだけではなく、技術者としての論理的思考、他者と協業するためのコミュニケーション力、周囲の人を巻き込んでものごとの解決に粘り強く取り組むリーダーシップ、異文化理解や語学力をはじめとするグローバル対応力を有していることは大前提だ。その上で「何かを変えてやろう、未来を創ってやろうという熱いマインドを持っている人に、ぜひAIS社で新しい挑戦をしていただきたいです」とアピールする。
AIS社の躍進を牽引し、自らも成長していく。そんな気概のある人材がこれからのクルマのエレクトロニクス化を切り拓いていくことになるのだろう。
