花王、8年かかった「敏感肌化粧品」の舞台裏 開発は早々に頓挫、試行錯誤の連続だった
きちんとケアしたのに肌がすぐカサカサになってしまう。せっかく買った服も首回りのタグが気になって着ることができない――。そんな「乾燥性敏感肌」の悩みを抱える人は多いのではないだろうか。
こうした「敏感肌」向け化粧品の市場は年々拡大基調にある。中でも市場を牽引しているのが花王の化粧品ブランド「キュレル」。2012年から4年連続で2ケタ成長を続けている絶好調のブランドだ。
そんなキュレルから、9月に50~60代の女性をターゲットにしたエイジングケア商品が発売された。実に5年ぶりの新シリーズだ。今回の商品は化粧水とジェルクリーム、クリームの3種類。不足しがちな肌の必須成分「セラミド」の働きを補い、乾燥などの外部刺激から肌を守るバリア機能の働きを助けるなどで肌に潤いを与えるというものだ。
花王の竹島雅彦ブランドマネージャーは「新シリーズを投入することで、敏感肌エイジングケアの市場をさらに押し上げたい」と意気込む。
開発はすぐに暗礁に乗り上げた
花王の調査(2016年)によれば、18歳から69歳の女性のうち、「敏感肌である」という意識を持つ女性は48%に上り、その比率は年々高まっている。さらに、50代でも43%、60代でも39%と敏感肌に悩む女性は多い。そこで、従来は20~30代と比較的若い層に向けたブランドだったが、中高年層に向けた新シリーズの展開を決めたのだ。
しかし、エイジングケア商品の開発には想像以上の労力を要した。実に8年近くの歳月を費やしているのだ。
開発が始まったのは2009年で、開始早々つまずいた。敏感肌に悩む人を対象に調査を進めると、「敏感肌だからシワができやすい」といった悩みを訴える人が非常に多かった。しかし、本当にそれが正しいのか、なかなか確証を掴むことができなかったのだ。
敏感肌といっても、肌の状態はさまざま、シワなどの原因もさまざまだ。どんなタイプの敏感肌を基準にして調査をすればよいのか、そうした点すら判断がつかなかった。また、表面上の小ジワであれば既存品でも対応できるため、新製品を出す意義を見いだせずにいた。結果、2年後の2011年には事業化を断念することになる。
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