外国人が心底驚く日本人の特異な「自然観」 なぜ「整った自然」をこんなにも愛でるのか

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振り返ってみると恥ずかしい話なのだが、日本に移住してまもない頃、日本人の自然に対する苦手意識や恐怖感は、大部分が都市化されすぎていることからくるもの、という根拠ない理由に達した。たとえば、オレゴンの人たちは、自然への愛と称賛をつねに表すことで、自然と深くつながっていると感じる。キャンプやハイキングが好きなのはそういった理由からだ。

が、しばらく経って、この考えが完全に間違っていたことに気がついた。都市化というものは日本人の自然に対する苦手意識などとはほとんど関係がないのだ。

日本人が自然と距離を置かなければならない主な理由は、日本の自然は真に恐ろしいものになりうる可能性があるからである。オレゴンの例でいえば、出合う可能性がある最悪なものとは、たまに遭遇するクマや毒クロゴケグモ(あまり人前には現れないが)、あるいは南東部の砂漠の場合だと、サソリやガラガラヘビくらいなものだ。数日間大雨が降り続くこともあるし、森林火災が発生することもある。しかし、大自然での生活の中で、心配することは多くなかった。

日本人は自然災害と共生してきた

これに対して、日本では多くの地域に住むスズメバチでさえも、死を招く可能性がある。スズメバチによる刺し傷は、猛烈に痛い。同様に、全国のあちこちの海にいるクラゲは悲惨な痛みを与えることができ、時には一部のヘビと同様に、刺された人を入院させてしまうことさえある。そして、田舎で遭遇するホラー映画から出てきたような巨大な有毒ムカデ(トビズムカデ)を忘れてはいけない。長さ30cmまで成長し、かまれると激しい痛みや悪寒、発熱などを引き起こす。

日本は自然災害も頻繁に起こる。巨大地震や津波、地滑り、台風、火山、そして洪水――。もちろん、こうした自然災害は世界各国で起こっているが、日本はまさにこうした災害と「共生している」といえる国だ。

2011年に東北地方で起こった東日本大震災は、世界で記録された中でも最も大きな地震のひとつであり、世界で最も洗練された耐震対策を誇っている日本でも、約1万6000人の死者、2500人以上の行方不明者を出した。

1923年の関東大震災では、震災、火事、火災旋風などでも14万人以上が死亡した。2016年の熊本地震も、2017年の九州の大雨に起因する激しい洪水も、街を破壊し、多くの人の命を奪った。日本はつねに、こうした大きな自然災害と歩んできた国なのである。

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