自衛隊の電磁波攻撃対策は本当に「ない」のか 海上自衛隊は対策済み、実は古くから議論

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当然、警戒・対策はすべきだが、EMP攻撃をいたずらに恐れる必要もないようだ。

「海上自衛隊の艦船など、対策はすでに十分取られている」と紹介するのは、金沢工業大学教授で元海上自衛隊海将の伊藤俊幸氏だ。EMPの原理について伊藤教授は、「ひどい落雷と同じであり、備えとしては建築物から落雷を逃す避雷針の役割を思い浮かべればいい」と指摘する。落雷を受けても避雷針をつたって外に逃がすという方法のことだ。自衛隊の装備では、すでにEMPを受けても大丈夫なようにシールドで覆うなどしており、海上自衛隊の場合は艦船全体としてうまく逃がすように設計段階から対策が取られているという。

伊藤教授はまた、「北朝鮮が言うような核爆発によるEMP攻撃は影響が広範囲にわたりすぎて、北朝鮮側も影響を受ける」と指摘する。北朝鮮は日本や米国と比べ電子機器が少なく、インフラなどの運営もさほど電子化されていないという見方もあるが、北朝鮮の電子化はそれでも進んでいる。したがって、彼らがEMP攻撃を仕掛ける可能性は極めて低い。

EMP攻撃に備えるシステムを提供する企業も

EMP攻撃に備えるためのシステムを提供している日本企業もある。三菱電機はオフィスビルなどを対象に「電磁シールドシステム」という強力なEMPなどの電磁波攻撃に備えたシステムを提供しているほどだ。実は、EMP攻撃対策で、日本企業が貢献してきた歴史があるのは、あまり知られていない。

電磁波パルスによる影響は、前述した1958年のジョンストン島の例に加え、1960年代と1980年代前半に真剣に考えられたことがある。トランジスタの開発が本格化した1960年代に、米国がトランジスタを使った人工衛星を発射したが、運用中に、水素爆弾の爆破実験で大気中に放出された放射線によって6週間動作しなくなったことがある。これを受けてトランジスタやその後のIC(集積回路)の開発では、EMPの被害を最小限にすることを念頭に置いてきた。

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