「安倍改憲」が支持率の回復で息を吹き返した 北朝鮮危機に民進党新体制も首相の追い風に

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その一方で9月1日が投票日となった民進党代表選の結果と、その後の幹事長人事をめぐるドタバタ劇も首相にとってはプラス要因となった。国会論戦での鋭い追及などで「民進党のジャンヌ・ダルク」とも呼ばれ、前原代表が真っ先に内定した山尾志桜里元政調会長の幹事長抜擢人事が、『週刊文春』が報じた同氏の「ダブル不倫疑惑」で人事決定直前に白紙撤回となり、山尾氏は不倫を否定しながら離党に追い込まれた。「党再生の最後のチャンス」と意気込む前原新体制が船出前につまずいたことが「首相への追い風」(自民幹部)ともなり、臨時国会での与野党攻防での自民優位につながるとみられている。

特に、臨時国会冒頭での首相所信表明演説とこれに対する衆参代表質問や予算委員会での論戦にも影響が出そうだ。永田町で「国会での首相の天敵」と呼ばれるのは民進党の蓮舫前代表、辻元清美幹事長代行に、昨年春の衆院予算委で「幼稚園落ちた、日本死ね」という匿名ブログを取り上げて首相を厳しく追及して一気に知名度を上げた山尾氏を加えた3人だ。この「天敵3人組」のうち、蓮舫氏は代表辞任で表舞台から遠ざかり、山尾氏は離党で論戦参加の機会すら失った。首相サイドは「質疑前から首相が不機嫌になる天敵が自らドロップアウトしたのは、まさに首相の強運の象徴」(側近)とほくそ笑む。

改憲派・前原氏登場で、通常国会発議にも現実味

首相が8月3日の記者会見で、憲法改正について「スケジュールありきではない」とトーンダウンしたことで、永田町では首相が憲法記念日の5月3日に表明した「2020年の改正憲法施行」というスケジュールは「先延ばしの可能性が大きくなった」(公明党幹部)と受け止められていた。首相自身は「改憲論議の進め方に変更はない」と繰り返すが、与党内では「年内の自民党案の国会提示は見送られ、首相も来年の通常国会での改憲発議を断念した」(公明党幹部)との見方が定着しつつあった。支持率急落で首相の求心力が低下し、党内の「安倍改憲」批判派が勢いづいていたからだ。

しかし、1カ月ぶりに再開した12日の党憲法改正推進本部の論議では、首相が5月に提起した「安倍改憲」の内容を支持する意見が相次ぎ、党改憲案の早期取りまとめへの機運も盛り上がった。同本部の司令塔となる高村正彦副総裁も8月29日の講演で「来年の通常国会に改憲原案を提出し、衆参両院での発議にこぎ着けたい」と語った。

これは改憲勢力が衆参で3分の2を占める現状を踏まえての発言だ。現在の衆院議員の任期満了は来年12月だから、衆院選はそれまでに実施されるが、永田町では「衆院での改憲勢力3分の2維持は望み薄」(自民選対)との見方が少なくない。首相が党内論議の取りまとめを委ねた高村氏の発言は、解散前の改憲発議を狙ったものであることは間違いない。

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