五輪後の中国経済 土地バブル崩壊、社会不安への懸念

拡大
縮小


2007年の建設など固定資産投資は前年比25%超の大幅増という状況だ。

すでに地価の上昇カーブは緩やかになりつつある。土地の価格は前年比8.2%増(2008年6月)とプラスを維持しているものの5カ月連続で上昇幅が縮小している。また、北京や上海といった大都市では住宅の在庫がだぶつき始めていると聞く。

また、サブプライムローン問題の影響が中国のバブル崩壊に影響する可能性もある。

加えて、中国の金融機関がアメリカのファニーメイやフレディマックなどの政府住宅支援金融機関の数十兆円と言われる債権を有しているとも聞く。土地への投資を支えている中国の銀行の経営が悪化すれば、土地価格の下落につながることは間違いない。その動きが急激であればバブル崩壊ということになる。

土地を失った農民の問題

バブルが崩壊すれば、それは経済の問題だけではなく、社会と政治の不安定化につながりかねない。

数年前、筆者は、北京近くの山東省に行った。そこで1000億円以上の資金を持つという土地成金と会った。彼が自分の資産を見せてくれた。遠くに見える山を指さしながら「あの山からここまでが自分の土地だ」と行った時の表情は、日本のバブル期の土地成金とそっくりだった。

彼は、農家から農地を買い上げ、宅地や商業地にする事業を行っていた。農地を売った農家はどうなっているかと実際に事業の担当者に聞いたが「一時的に金を受け取り、あとはどうなるか知らない」との返事だった。バブルの影響は農家にも及んでいる。

 筆者は北京市内でホームレスの家族を見たことがある。幼い子供が親と路上で寝ていたのがすごくショックだった。現地の人に聞くと、田舎で農地を失った家族が職を求めて家族ごと都市部にやってきて職が見つからずホームレスになることは多いとことだった。

農民には、年金制度や医療保険もない。そして、農民戸籍で農村に縛り付けられている。中国の雇用の7割が農家だ。その農家は非常に貧しい。高層ビルが立ち並ぶ北京から車で4時間ほど移動しただけでレンガ作りの貧しい農村に行きつく。多くの中国人がこのような貧しい暮らしをしていることをなかなかわれわれ外国人は認識できない。

今でも頭に残っているは、中国政府に近い中国人エコノミストの言葉である。彼は、「中国政府の最大に課題は食べることができない人間を出さないこと。経済成長したくて成長させているのではない。高い経済成長を維持しなければ体制が維持できないから成長させるのだ」と言っていた。
 
 この言葉を中国経済について考えるときには忘れていけないと思っている。

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