解任されたバノン、トランプ政権へ宣戦布告 「国際派」の勝利か、なおポピュリズム継続か

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バノン氏は辞任が発表された日の夕方、ブライトバート・ニュースの編集会議の席に座り、会議を取り仕切っていた。ホワイトハウスを去ったバノン氏は"野に放たれた野獣"になるかもしれない。バノンを知る人は、「ホワイトハウスの外にいるほうがバノン氏の影響力は強まる」と語る。ブライトバート・ニュースを中心に今まで以上に激しい論陣を展開するかもしれない。

バノン氏はホワイトハウスを去るに際して「何か混乱があるようだから、明らかにしておく。自分はホワイトハウスを去り、トランプ大統領のために議会やメディア、大企業といった敵と闘うつもりだ」、「私は外部からトランプ大統領の政策実現のためにもっと効果的に働くことができると思う。それを阻止する者がいれば、私たちは闘う」と語っている。その発言には解釈が必要だろう。すなわち、バノンはホワイトハウスの外からトランプ大統領に圧力を掛けると、語っているのである。トランプ大統領にポピュリストの選挙公約の実施を求めていくことになるだろう。

トランプ大統領の迷走はまだ続くのか

フォックス・ニュースのアンカーマンのサンドラ・スミスは「大統領が間違っていると判断したら、バノンは大統領を容赦なく攻撃するために影響力を行使するだろう」と語っている。元ブライトバードの記者のカート・バーデラは「バノンは解放された気持ちだと思う。彼はホワイトハウスに残っている国際派に最大限の打撃を与えるためにブライトバート・ニュースを公然と使うだろう」と語っている。

バノン氏の攻撃対象になるのは、マクマスター国家安全保障担当補佐官、パウエル大統領補佐官、コーン国家経済会議委員長、クシュナー上席顧問、トランプ大統領の娘・イヴァンカなど"国際派"のグループである。ブライトバート・ニュースの担当者が国際派グループを"熱核兵器(thermonuclear)"で攻撃すると過激な発言をしていることが伝えられた。

「バノン解任」は物語の終わりではない。バノンという理論的な柱を失ったトランプ大統領の迷走はさらに激しくなるだろう。共和党のエスタブリッシュメントの影響力が強まってくるのは間違いない。ポピュリストを標榜するトランプ大統領は、それに抵抗するのだろうか。あるいは飲み込まれてしまうのだろうか。

中岡 望 ジャーナリスト

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なかおか・のぞむ / Nozomu Nakaoka

国際基督教大学卒。東洋経済新報社編集委員、米ハーバード大学客員研究員、東洋英和女学院大学教授などを歴任。専攻は米国政治思想、マクロ経済学。著書に『アメリカ保守革命』。

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