ジリ貧の「ビジネス書」市場に見える微かな光

安易な企画は敬遠ぎみ、本格派が求められる

市場全体は縮小傾向ですが、その分、新たな流れが生まれています(写真:msv / PIXTA)

『チーズはどこへ消えた?』(扶桑社)350万部、『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)170万部、『金持ち父さん 貧乏父さん』(筑摩書房)126万部――。

2000年代はまさに「ビジネス書黄金期」でした。話題だからとりあえず読んでおかなければ、と思える本が次々に現れました。

ところがビジネス書市場は、2011年に1600万冊台を割ると、2015年以降は1200万冊台と下降期に突入しています。衰退の原因については拙著『平成のビジネス書「黄金期」の教え』でも詳しく解説していますが、すっかりブームが終焉してしまったビジネス書は、これからいったいどこへ向かおうとしているのでしょうか。

展望1 予備校文化の拡大

今後を占うに当たり、ある人物が思い出されます。細野真宏さんです。細野さんは2000年代を代表するビジネス書作家ですが、細野さんの登場のなにが画期的だったのかというと、「わかりやすく、面白く」という2000年代のビジネス書ブームを先駆けたことでした。

細野さんは数学専門の大学受験予備校「Hosono's Super School」を主宰しておられ、1990年代にはラジオ番組『大学受験ラジオ講座』(文化放送)にも出演されています。つまり、「カリスマ予備校講師」のビジネス書作家なのです。

そもそも予備校講師という職業は、高度な知識をインプットして、わかりやすくアウトプットしなければ立ちゆきません。「教える」という行為は、執筆と実に相性がいいのです。実際、予備校・塾業界は「今でしょ!」の林修先生や「ビリギャル」の坪田信貴先生のほかにもヒットメーカーを多数輩出してきました。

また、実は受験参考書の流行が、少し遅れてビジネス書でも流行するという現象が出版界には見て取れます。たとえば、1980年代後半からヒットし始めた「実況中継シリーズ」(語学春秋社)をご存じでしょうか? これは予備校の講義さながらの語り口調が特徴的な参考書です。ジョークもそのまま掲載するなど、実にライブ感あふれる内容が人気を博しました。

この形式を各社が追随していったうちの一つに、中経出版(現・KADOKAWA)の「面白いほどわかる本」シリーズがあります。細野真宏さんは同シリーズの著者であり、ここで培ったスタイルをビジネス書市場に持ち込んだのでした。

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