河野外相の「発信力」は、いきなり秀逸だった ASEAN関連外相会談を取材してわかったこと

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8月7日、河野太郎外相(左)と握手する中国の王毅外相(写真:新華社/アフロ)

「自分がフィリピン人だということをいまや私たちはあまり考えるべきではない」「自分がASEAN(東南アジア諸国連合)人だと考え始めるのです」フィリピンのアラン・カエタノ外相は演説の中でそう言った。

ASEAN関連外相会談(8月6〜8日)の最終日、開催地であるフィリピンのマニラで、多くの外交官や大使らが集う中、ASEAN設立50周年を記念した荘厳な式典が開かれた。1967年バンコク宣言に署名した5人の創設者に敬意を払ったり、メンバー国首脳のビデオメッセージが流れたほか、オーケストラの演奏に合わせて東南アジア各国の多様な文化をイメージさせるダンスパフォーマンスが上演され、来賓者たちの目を奪った。

ASEANは組織としてまだまだ未熟だし、エリート主義だと批判されることもある。だが、手と手を携え、紛争の地から平和な地域へ、貧困の地から活気のある経済へと着実に進化してきた。それと対照的に、隣接する北東アジアでは、どうして各国首脳が定期的に会えないほどお互いがいがみ合っているのだろう、と率直に思った。政治体制の違いが大きく、国力も均等でないとはいえ。

手と手を携えて。マニラでのガラディナーにて(写真:ロイター/Mark Cristino)

「失望」発言の裏に

そんな考えが浮かんできたのは前日7日に行われた日中外相会談の冒頭発言が念頭にあったからだ。

中国の王毅外相は河野太郎新外相の父・河野洋平氏を持ち上げたうえで、このように「ジャブ」を繰り出した。「あなたの発言を聞いて、私たちは失望することになるかもしれないと思った。なぜなら、あなたがアメリカ人が与えた任務を遂行しているように感じたからだ」。

河野外相は「中国には大国としての振る舞い方を身に付けていただく必要がある」と即座に応じた。

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