パリの駅ナカ「星付きシェフ」が続々と出店へ 多忙な人向けに短時間、低価格で高級料理を

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同社の総売上高におけるレストラン事業の占める割合は、25%にも及ぶ。主要事業であり、駅ナカでの食事は再投資すべき1番手に据えられた。その改革の第1矢は、約4年前、2013年9月に放たれた。

パリ・サン・ラザール駅内に2013年9月にオープンした「ラザール」(筆者撮影)

パリ北駅と同様、パリの主要ターミナル駅の1つであるサン・ラザール駅構内に、レストラン「ラザール」をオープン。オーナーシェフに起用したエリック・フレション氏は、パリ8区のホテル・ル・ブリストル内でレストラン「エピキュル」を営み、2009年ミシュラン3つ星を獲得している。

ロペール氏は、相次ぐミシュラン星付きシェフの起用理由を、「彼らのことが好きだからです」と明言する。

「オーナーシェフの選択は、われわれが任意で行っています。料理に対し、深い造詣を有すると同時に、単純さも理解するシェフが理想。なぜなら、われわれがシェフに依頼するのは、ミシュランで星を獲得できるレストランではなく、人気店を作ってほしいという内容だからです」

ミシュラン効果はほかの駅にも波及

同社は、ラザール出店を前に綿密なマーケティングを行った。駅の利用者に対し、「なぜレストランを利用したか、しなかったか」を問う。さらに、その利用者に「なぜ再訪したか、しなかったか」。また、利用しなかった者には、「なぜ駅ナカで食事の時間をとらなかったか」と、質問は細部にわたった。

当然、“ミシュラン星付きシェフ”の広告効果は絶大だった。ラザール開店後のレストラン事業の売上高は、2014年から2015年にかけ2.2%も伸びた。同社がフランス国内で監督する駅舎は3029(2017年7月現在)あるが、これらのほかの駅の飲食事業にも波及効果があったと見るべきだろう。

「冷製サーモンのパリジェンヌ風」はランチ時19ユーロ(約2500円)(筆者撮影)

ランチ時にラザールへ足を運び、赤ワインとともに、「冷製サーモンのパリジェンヌ風」を食す。言葉で表現できないおいしさ。それを何とか言葉に変換し、ロペール氏に告げた。すると、意外な言葉が返ってきた。

「実は、わがままなパリジャンたちから、よりおいしいものをという声があるのも事実です。駅ナカでは、どうしてもフランスのクラシック、つまり定番料理の提供になってしまう。エピキュルとクオリティが同じではない、との主張です」

ここで、再び補足したい。ミシュランガイド2017年フランス版に掲載された3つ星レストランは、わずか27店舗。エピキュルはその中の1つだ。

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