都内から続々移住、築50年郊外団地のヒミツ 衰退する郊外は37㎡・1LDK物件から蘇る?

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大島:座間駅は、急行は止まらず、知名度は低い。小田急電鉄さんによれば、都心から50分という位置にありながら、沿線の家賃相場は比較的安いと聞いています。これを今後、選ばれる街にするにはどうするかと考えたときに、「子どもたち」というコンセプトにフォーカスしようと思いました。

ホシノタニ団地の見取り図(図:ブルースタジオ)

やっぱり、(1室の広さが)37㎡だったことがよかったと思っているんです。この広さだと、家族では住めないけれど、2人暮らしのカップルにちょうどいい。しかも、駅前立地で7万〜9万円台。すると、共働き夫婦にとっては、なかなかいい条件のはず。

2人暮らしカップルは「ここで子育てしよう」

ここで2人暮らしを始めたカップルに何を気づいてほしいかというと、「この街にはこんなに子育てをしている人たちがいるんだ。こんなに子育てに適した街なんだ」ということ。団地の前には子どもたちが遊べる広場があって、子育て支援施設があったり、菜園があったりもするから、周辺地域の子育中の人がそこに集まってくる。しかも、たとえば世田谷区から移住してきた人からしたら、家賃は半分くらいになっているはずで、経済的にも暮らしやすい。自然も豊かだし。となると、ここで子育てをしようというイメージが湧きやすいんです。

大島芳彦(おおしま よしひこ)/1970年東京都生まれ。1998年石本建築事務所入社。2000年よりブルースタジオにてリノベーションをテーマに建築設計、コンサルティングを展開。大規模都市型コンバージョンや大規模団地再生プロジェクトなどを手掛ける一方で、エンドユーザー向けに物件探しから始める個人邸リノベーションサービスも多数展開。近年では地域再生のコンサルティング、講演活動で全国各地に足を運ぶ(撮影:梅谷秀司)

いざ子どもを持てば、人というのは、自分が子育てを始めた場所に愛着を持つもの。ママ友もできるし。でも、子どもが大きくなってくると37㎡の部屋は手狭になってきます。そうなればここを出て周辺にたくさんある空き家をリノベして移り住んでくれればいい。

要するに、ホシノタニ団地がこの街へのトライアルステイ的な装置になって、地域住人の世代の循環を生んでくれることを期待しているということです。

三浦:企業でいえば、インキュベーションだよね。

郊外の物件は、ホシノタニ団地以外にもいくつか手掛けてますね。先日、東久留米の築30年の集合住宅をリノベした賃貸物件前で野菜市場が開かれると知って、僕もお邪魔しました。あと、小田急江ノ島線の鵠沼(神奈川県藤沢市)でも、地域の社会課題をテーマにした物件をやられているんでしたっけ。

大島:はい。リーマンショックの前までは、お客さんのほとんどが外資系ファンドで、3A地区(麻布・赤坂・青山)を中心に仕事をしていましたが、最近はもう郊外専門のようになっちゃって。

今は環八(環状八号線)どころか16号線よりも外側の物件を手掛けることが多くなってきています。現在も、ホシノタニ団地をきっかけとして、小田急沿線の郊外を見直していきましょう、という話をしています。

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