都内から続々移住、築50年郊外団地のヒミツ

衰退する郊外は37㎡・1LDK物件から蘇る?

大島:リフォームとリノベーションの違いって何かっていうと、リフォームっていうのはハードウエアを交換することなんですね。もう一度フォームを変えるっていうことだからリフォーム。だけど、リノベーションって、もう一度革新、刷新するということで、使い方を変えるのがリノベなんです。

三浦:じゃあ、いわゆる設計、施工の仕事はなくても、コンサルティングの仕事でいいということですか?

大島:そうですね。建築ではなく、たとえばランドスケープ(景観)の再生や特定のエリアの地域価値再生を依頼されることが最近増えています。たとえば、某鉄道会社から依頼されているあるニュータウンの駅前再編の仕事として、駅前で仕事ができるようにしましょう、と取り組んでいるのが、オフィスビルを作ろうというわけではなく、公園だったりする。公園にWi-Fiを飛ばして、木陰で働ければ、その方が郊外の仕事の仕方らしいでしょ。

その街には、1980年代から00年くらいまでは、街の中心として商業施設があって、朝、人がウワーッと出勤していって、夜バーッと帰ってくる。そんな駅だったのに、今は人が全然いない。駅前の商店はシャッター街。そのままにしておくくらいなら、マンションを建てて売ってしまえ、となるのですが、そうなると街の商業的な賑わいは半永久的に止まってしまい、実は高齢化の問題が先送りされただけ。かといって、かつての商業の賑わいを再生させるのも現実的には難しい。となると、必要なのは仕事ができる場をつくるということなんです。

『東京郊外の生存競争が始まった!』(光文社新書)。上の図をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

三浦:そういうアイデアの元ネタとか着想のヒントになった街があるんでしょうか。欧米、特にアメリカの住宅地は公園がうまく活用されていますよね。

大島:ええ。アメリカでは公園が積極的に活用されていて、特にニューヨークなんかの都市や近郊においては、公園は仕事をする場所としてメジャーです。

たとえば、マンハッタンのミッドタウンには、Bryant Park(ブライアントパーク)という、ニューヨーク公共図書館の前に広がる緑豊かな公園があります。あそこの回廊型の林の木陰では、多くの人がパソコンを打ったり、打ち合わせをしていたりとか、仕事をしている人を多くみかけます。

三浦:日本の会社は、フリーアドレス制は増えてきたけど、都心のオフィスの机の上で仕事する、という固定観念がある。ただ、簡単な仕事は機械がやってくれる時代で、クリエーティビティが必要になってくる中、いろんな場所でいろんな働き方があることが、創造性にも影響してくるんじゃないですかね。

郊外が脱ベッドタウンしたら、面白い街になる

三浦:『週刊東洋経済』(2017年7月15日号)の書評に、私の本(『東京郊外の生存競争が始まった!』)が載っていたんだけど、「楽観的な郊外展望」って一言で書いてあった(笑)。楽観しているつもりはないんだけどね。

都心はマンションと同質的なビルばっかりになって、チェーン店のお店が並んで、個人経営のものすごくおいしい焼き鳥屋さんがあるとか、際立った個性が入り込む余地がなくなってきているような気がする。

だからこそ、郊外で働いて、郊外でお店をやって、郊外が脱ベッドタウン化していったら、面白い都市になる可能性があると思う。10年後、あるいは20年後のことかもしれないけれど。

大島:楽観していい郊外、つまり可能性に満ちあふれた郊外ってありますよ。僕も、多摩ニュータウンあたりからその西側、厚木のほうや横浜市北部のあたりまでは、自由な発想で、イチから街の存在意義そのものをリノベしたら、ものすごく個性的な街が生まれるはずだと思っています。その軸は、働ける街だけじゃなく、アミューズメントに長けた街や、赤提灯が住宅街全体に点在する居酒屋団地だとか……。

どうやって衰退を食い止めるかじゃなくて、もう一度どうやって「選ばれる街」になるかという、街そのものの存在意義を問い直すべき時代だと思いますよね。

(構成:東洋経済オンライン編集部 印南志帆)

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