日本が誇るクラシックの祭典「PMF」の舞台裏 今年の札幌は文字どおりアツかった!

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そして、来年はPMFの提唱者であるレナード・バーンスタインの生誕100年を迎えるメモリアルイヤー。世界各地で記念のイベントが準備される中、今年のPMFでも生誕100年のプレイベントとして、CDで聴く「バーンスタイン思い出の名演」コンサートが開催された。これはバーンスタインが遺した名盤の数々を、コンサートホールに最高のオーディオシステムを持ち込んで実際のコンサートを体験するように楽しむという試みだ。

YAMAHAの協力によって導入されたのは、2016年に発表されたHiFi フラッグシップスピーカー「NS5000」。かつての名機NSシリーズの流れを受け継ぐ最新作として開発されたこのスピーカーの値段はなんと2本で150万円。YAMAHAが満を持して28年ぶりに発表した新作スピーカーをホールで鳴らしたらいったいどうなるのか!? そこにはバーンスタインの姿がよみがえるのか!?という期待も込められたイベントだ。

当日視聴する音源は、「バーンスタイン思い出の名演」の名の下に一般の方々からの投票によって決定。まさにPMF、そしてバーンスタインの価値をより多くの人に知ってもらいたいという希望を込めた参加型のイベントとなった。その方法は、あらかじめセレクトされた主要150曲の中から5曲をピックアップして投票するというもの。最終的な結果発表を兼ねて行われた札幌コンサートホール Kitara小ホールでのイベントには、予想以上のファンが駆けつけて大盛況。YAMAHAのNS5000が空気を震わす響きの空間に身を浸す体験は、その昔盛んに行われていた「CD(LP)コンサート」の新たな可能性を垣間見るような思いがする。

今の時代は、音楽をいつでもどこでも気軽に聴けるが当たり前になりつつある。その風潮に逆行するかのようなこのイベントは、まさに“耳を澄ませて音を聴く”という、録音の原点を見直すような試みだ。

音楽は思い出とともに

さて、気になる投票結果はというと、ベスト10は以下のような順番で多くの方々の支持を得た作品が名を連ねることとなった。このイベントの司会進行を行った際に、投票と併せて寄せられたメッセージに触れたことも忘れがたい。それぞれの思いが込められた文章の熱さは、音楽が人々の記憶とともにあることを改めて実感する瞬間だ。

1. ショスタコーヴィチ:交響曲第5番ニ短調
2. ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー
3. マーラー:交響曲第9番ニ長調
4. ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調「合唱付き」
5. マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
6. マーラー:交響曲第5番嬰ハ短調
7. シューマン:交響曲第2番ハ長調
8. ストラヴィンスキー:バレエ「春の祭典」
9. ガーシュウィン:パリのアメリカ人
9. マーラー:交響曲第1番ニ長調「巨人」

以下詳細はこちら

来年2018年は、いよいよバーンスタイン生誕100年のメモリアルイヤー。ここでは、作曲家バーンスタインの作品に焦点を当てたCDコンサートを楽しみたい。今年のPMFも終盤を迎え、音楽祭の大団円は芸術監督率いるPMFオーケストラの川崎(7/31)&東京(8/1)公演だ。カリスマ指揮者ゲルギエフによって引き出される若者たちの“ひと夏の咆哮(ほうこう)”をぜひご体験あれ。

田中 泰 日本クラシックソムリエ協会 代表理事

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たなか やすし / Yasushi Tanaka

一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事、スプートニク代表取締役プロデューサー。1957年生まれ。1988年ぴあ入社以来、一貫してクラシックジャンルを担当。2008年スプートニクを設立して独立。J-WAVE「モーニングクラシック」「JAL機内クラシックチャンネル」等の構成を通じてクラシックの普及に努める毎日を送っている。

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