不動産価格暴落を招く「街の縮小計画」の悲劇 地方だけじゃない!世田谷でもリスクはある

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国もこうした状況は理解しており、手をこまねいて見ているわけではない。そこで打ち出されたのが、「立地適正化計画」だ。これは、簡単にいえば「街を縮める政策」である。

人口・世帯数が減少すると、上下水道などのインフラ維持やゴミ収集・除雪などの行政サービスが非効率極まりないことになってしまう。その分、税金を数倍に上げれば解決はできるが、そんなことは事実上不可能だ。そこで、街を「人が集まって住むエリア」と「そうでないエリア」に思い切って分断するのである。2017年4月末の時点で、348の自治体が本計画の作成に着手している。

本格的な人口減少が始まる前に対策を打つ

まずは商業施設や福祉・医療施設などの立地を促す「都市機能誘導区域」を設定する。その周辺には、人口密度を維持ないしは増加させ、生活サービスやコミュニティが持続的に確保できるよう居住を誘導する、「居住誘導区域」を設ける。また、こうした拠点を結ぶ鉄道やバスなどの公共交通ネットワークなども、併せて位置づける。さらに、この地域には容積率の緩和や税制優遇、補助金制度などで、他の地域からの移転も促していく。

一方、居住誘導区域外で3戸以上の住宅の新築や1000平方メートル以上の開発行為をする場合は、市町村長に対し事前の届け出が必要となっていて、支障があると認められた場合には、市町村長は立地適正化のための勧告ができる。

こうした都市計画というものは、息の長い取り組みで、ある日、線引きされたからといって、突然何かが変わるわけではない。どの自治体でも15~20年後といったスパンを展望しつつ、5年ごとに見直しを行うとしているケースが多い。それでも、これから本格的な人口数減少が始まる中で、街にドラスティックな変化が起こるのは間違いがない。現行の規制はまだ緩いものであるが、徐々にその枠組みは強化されるだろう。

これからマイホームを買おうとしている方も、すでに買って住んでいる方も、自身が所有する不動産が立地適正化区域内に入りそうかどうかは、必ず確認しよう。区域内ならひとまず安心だが、仮に区域外だとどうなるだろうか。

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