「捨て犬」「殺処分」がなくならない本当の理由 業界を知り尽くした男が語るペット流通の闇

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子犬を殺処分、つまり殺していたケースがあったのです。焼却していたという話もありましたし、殺した犬を川に捨てたという事件もありました。これは昔の話で、さすがに現在では聞かないようになりましたし、こんなことは行われていないでしょう。

けれど、ビジネスしか考えない生体販売業者により、売れ残った子犬がひどい扱いを受けているのは、今でも同じです。

売れ残った子犬を引き取る業者がいて、山の中のバラック小屋に犬を閉じ込めている例があるのです。テレビニュースでこうした悲惨な状況を見られた方もおられるでしょう。まさに、飼い殺しです。

新たに犬を飼いたい人にお勧めの方法

こうした犬をめぐる残酷な現実が、しだいに世間に知られるようになり、行政も少しずつ動き始めています。東京都の小池百合子知事も2020年のオリンピックまでに殺処分ゼロを目標に掲げています。今後は、ペット販売についても、動物愛護の観点から規制が行われるでしょう。

たとえば、ペットショップで子犬を入れているショーケースの広さについて、現在は何も法的な規制はありませんが、近い将来、1頭当たり最低限の広さを確保する法律が作られると思われます。

そうなれば、ペットショップでは、子犬を売るために今よりも広い面積を必要とすることになります。子犬を置いておくだけで今よりも高いテナント料がかかりますから、子犬を販売するビジネス上のうまみが小さくなるわけです。

こうした規制を厳しくすれば、事実上、ペットショップでの生体販売はできなくなるでしょう。

そのうち日本でも欧米のように、ペットショップでビジネスライクに子犬が売られるのではなく、ブリーダーから直接に譲り受ける時代になると思うのです。

実際には、生体販売をビジネスとしか考えない人々の抵抗もあり、簡単には解決しないでしょう。けれど、少しずつでも、改善していくと信じたいものです。

そして、これから新たに犬を飼いたいという人には、自分からブリーダーさんのところに出向いていって、どのようなワンちゃんかちゃんと見極めてから飼われることをお勧めします。

ネットで検索すれば、ブリーダーさんと犬種の情報がたくさん出てきます。それで目星をつけてから、実際にブリーダーさんのところに行ったらいかがでしょうか。実際に出向いて見れば、ブリーダーさんの人柄、ワンちゃんの生育環境、しつけの状況、母親や兄弟の様子などがわかります。

つまり、愛情をもって育てられたワンちゃんか、どのような成犬に育つかといったこともわかるわけです。

命あるものを飼うのですから、これくらいはきちんと見てから、飼うようにしていただきたいものです。

橋長 誠司 ピーリンク顧問

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はしなが まさし / Masashi Hashinaga

30年以上にわたりペットフード流通の第一線で活躍。ペット業界の裏表を知り尽くした男。「ペットフードの日」の名づけ親。

1962年生まれ。大学を卒業後、共立商事(現在の共立製薬)に入社。MR(医薬情報担当者)として、動物病院に対する動物用医薬品(ワクチン、駆虫薬など)、食事療法食の営業に従事。その後、ユニ・チャーム、日本ヒルズなど国内外のメーカーでペットフードのマーケティングに携わる。

この間、国内のペットフードビジネスを盛り上げる目的で、ペットフード協会に対して「ペットフードの日」を提案。これが実り、現在、毎月20日がその日になっている。ドッグライフカウンセラーの資格を持ち、しつけを含め人と犬の生活を快適に送ることができるよう、ペットオーナーに対してもアドバイスを行っている。

現在は、ペット関連情報等の発信などを行っているピーリンクの顧問を務める。

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