単純な数字だけの燃費競争はもう意味がない 「ミライース」や「CX-3」が打ち出した新潮流

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これに限らず、同じ5~6月の販売成績を見ると、必ずしも燃費の良い車が上位に並んでいるわけではないことがわかる。たとえば首位のN-BOXは室内空間を重視したスーパーハイトワゴンであり、燃費は最高で25.6km/Lと、それほど良くない。

目に付くのは6月に5位に入った日産自動車「デイズ」。デイズは三菱自動車工業「eKワゴン」との共同開発生産車である。一昨年、三菱による燃費不正行為が発覚したことを受け、モード燃費の再試験を実施。その結果最高値は30.4km/Lから25.8km/Lへと大幅に数字が下がっている。

にもかかわらず6月の販売台数ランキングではアルトを上回った。日産の販売力がダイハツやスズキに勝ることもあるだろうが、ユーザーが燃費だけを重視して車を選んでいないことがわかる。

同様の傾向は登録車(軽自動車以外の普通乗用車)にも見られる。4月の新車乗用車販売台数ランキングでは、昨年12月に発売されたトヨタ自動車の新型SUV「C-HR」がトップに立って話題になった。

C-HRはプラットフォームやパワートレインをプリウスと共用しているが、燃費は30.2km/Lと、40km/L以上をマークする車種もある、同じくトヨタ「プリウス」にはとても及ばない。さらにC-HRには1.2Lターボエンジンと4WDを組み合わせたガソリンエンジン車もあり、こちらの燃費は15.4km/Lにすぎない。そんな車種がプリウスを抜いて首位に躍り出た。

エコカー減税が販売増につながる時期もあったが…

なぜメーカーは燃費性能を追求し続けてきたのか。理由のひとつにエコカー減税がある。燃費性能が良ければ減税のレベルが上がる。それが販売増につながる時期が確かにあった。ところが現在、国産車のほとんどはエコカー減税に対応している。もはや宣伝材料ではなくなりつつある。

しかもモード(カタログ値の)燃費と実燃費の乖離がユーザーから指摘され始めた。実燃費はユーザーの走行状況によって大きく異なるが、筆者が試したかぎりでも国産車ではモード燃費を実燃費が抜くことはほとんどない。

それでも多くのメーカーは、モデルチェンジのたびに燃費の向上をアピールしてきた。三菱の燃費不正行為がこの流れの中で発生したことは間違いない。

日本人は数字に流されやすいといわれる。ユーザー側もメーカー側も、価格、最高出力、そして燃費などを判断材料とする人が多かった。ただしエンジンの良しあしは吹け上がりや音や力の出方など、感覚的な部分も重要だということに気づいたのは、メーカーよりもユーザーのほうが早かったようだ。

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