環境意識を高める
企業と消費者とのコミュニケーションツール

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公益財団法人日本環境協会による「エコマークアワード2016」が発表され、理想科学工業やグリーンプラが「プロダクト・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。社会と企業とをつなぐコミュニケーションツールとして、エコマークはどのような役割を果たしてきたのか。日本の環境ラベルとして海外での認知も広がっているエコマークの認定を取ることは、企業にとってどのような意義があるのか。そして、エコマークのこれからに期待することとは。消費者行動とマーケティングが専門で、環境ラベルにも詳しい筑波大学大学院ビジネス科学研究科の西尾チヅル教授に聞いた。

国際競争力のアピ―ルにも

― 西尾先生は「エコマークアワード2016」選考委員長も務めていらっしゃいますが、あらためて今、エコマークを取る意義について、どのようにお考えですか。

筑波大学大学院ビジネス科学研究科
研究科長 教授 博士(工学)
西尾 チヅル

西尾 エコマークは国際標準化機構の規格で認められた国内唯一のタイプIの環境ラベルです。第三者がきちんと評価したうえで認証していますし、タイプIラベルごとに相互認証できるのは、ほかの環境ラベルにない優れたところと言えます。国際競争力のアピ―ルにもつながりますから、グローバルに事業を展開していこうという企業にとっては重要なコミュニケーションツールになっています。国内を見ても小学校などの環境教育ではエコマークが紹介されているので、環境教育を受けて育ってきた多くの若い人たちは、エコマークのことを知っています。将来の市場を担う世代が慣れ親しんでいるというのはとても重要なことで、これは環境ラベルとしてのエコマークの大きな強みになっている点です。

― 1989年にエコマーク制度がスタートしてからすでに30年近くが経過しています。この間にエコマークはどのように変化してきたのでしょうか。

エコマークとは
エコマークは、さまざまな商品(製品およびサービス)の中で、「生産」から「廃棄」にわたるライフサイクル全体を通して環境への負荷が少なく、環境保全に役立つと認められた商品につけられる環境ラベルです。

西尾 もともとエコマークは、マークの付いた商品が環境商品であることを消費者に伝えるためのコミュニケーションツールでした。当時は環境へのちょっとした対応でエコプロダクツだということを標榜しているケースもありましたが、今や環境対応は当たり前の条件となり、ちょっとした対応といった程度ではエコマークが取れなくなってきています。日本環境協会も認定基準を改定してきていて、今は高度な技術を使ったイノベーティブなプロダクツにエコマークを与えようという姿勢が感じられます。結果的に現在では、トップランナーでないとなかなかエコマークの認定を取るのは難しくなっているのではないでしょうか。ただ企業の側として見れば、難しいからこそあえてチャレンジしたくなるという側面もあるようです。

プロセス全体での環境対応を重視

西尾 それともう一つ、エコマーク自身も1996年の改定から、それまでの製品の一側面だけを評価する認定基準を、原料の調達から生産、使用、廃棄、リサイクルに至るまでの製品のライフサイクル全体の環境負荷を評価する認定基準に見直しを行っています。部分最適ではなく、プロセス全体での環境対応を重視する傾向です。しかも、資源循環、生物多様性など四つの重点領域があり、どれか一つを満たしているだけでもエコマークの対象になるのですが、アワードを受賞するような商品は二つや三つの領域に対応している場合が多くなっています。そのためには相当な技術開発などが必要になるはずで、だんだんハードルが高くなっているのは間違いありません。

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