意外?リニア工事にJR各社が協力する舞台裏 JR東海にはできない重要な仕事があった

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発生土を積んだコンテナはまずトラックに乗せられる(JR東海・JR貨物提供)

梶ヶ谷貨物ターミナル駅からは川崎市で生じた廃棄物が貨物列車で運ばれている。川崎市では交通渋滞や車の排気ガスを減らす対策として、1995年から廃棄物輸送の一部をトラックから貨物列車に代替している。

この廃棄物輸送列車「クリーンかわさき号」は、梶ヶ谷貨物ターミナル駅と神奈川臨海鉄道・末広町駅およびJR川崎貨物駅の間を1日1往復する。ここから廃棄物は最終処分場までトラックで輸送される。クリーンかわさき号導入の結果、川崎市の交通渋滞や大気汚染は大きく改善した。

梶ヶ谷非常口・資材搬入口の工事期間は3年程度の予定だ。従って29万立方メートルの発生土も3年かけて運ばれる。当面は貨物列車の運行は6時17分発の1日1往復にとどまり、残りはトラックを使って輸送するが、「できるだけ早く貨物列車による輸送量を増やしたい」とJR東海の担当者は語る。ただ、それには関係各所との調整が必要だという。

発生土が飛び散らないようにコンテナは厳重に密閉される(JR東海・JR貨物提供)

貨物列車は南武線などJR東日本の営業線を走る。今回のダイヤはJR東日本との調整を経て新たに設定されたものだ。今後、貨物列車の運行本数を増やすとなると、さらなる交渉と調整が必要となる。

つまり、JR東海が単独で行っているように見えるリニア建設プロジェクトも、JR貨物やJR東日本が陰で協力していたというわけだ。

発生土の受け入れは問題山積

梶ヶ谷非常口・資材搬入口の工事は3年で終わるが、その後は大深度地下トンネルの掘削が始まる。当然、その発生土も貨物列車での運搬が期待されている。

リニア工事を巡っては、トータルで東京ドーム45杯分ともいわれる発生土の扱いが問題となっている。すべての受け入れ先が決まっているわけでないからだ。また、貨物駅が近くにある梶ヶ谷とは違い、他の場所では発生土の運搬はトラックに頼らざるを得ない。

いつどの段階で発生土が生じるかがわからない段階では、発生土の受け入れ先を具体的に決められないのは仕方ない。とはいえ、発生土の扱いや運搬方法について心配している人は今も少なくない。この点についてJR東海は今後も丁寧に説明していく必要がありそうだ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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