「3人に1人」が内定獲得、前倒し就活の内実 5月1日には文系31%、理系41%が内定済み

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一方、学生にとっては、選考が早く進んでいるため、早々に不採用の結果が送られ、志望企業の“弾不足“に困る学生も出始めている。新たな志望企業を慌てて探す学生がここにきて急増。企業の採用担当者が、ゴールデンウイーク明けに募集の案内メールを就活生向けに送っているが、そのレスポンスがよくなっているという。

そうはいっても引き続き学生に有利な売り手市場の状況は変わらない。昨年は6月1日時点で半数が内定を得ていたが、今年はさらに多くの学生がその時点で内定を得ることは間違いない。

地方の有力企業が先行して内定出し

マイナビが3月1日に開催した「マイナビWEB就職EXPO」。地方の学生を意識した取り組みを行っている (撮影:ヒダキトモコ)

もうひとつ、特徴的な動きがある。地方での内定出しが早まっているというのだ。「東京に本社がある大手企業が地方で積極的な採用を行っているため、焦りを感じた地元の有力企業が先行して内定を出している」と平野氏は地方の学生を早めに囲い込む動きがあると語る。

実は地方では、学生を取り切れていない状況が都市圏以上に高い。就職みらい研究所の「就職白書2017」によると、採用計画に対して、採用者数が少なかった未充足企業の割合は、全体で48.3%。関東44.6%、関西43.8%と、全体の値より低い一方、北海道は61.2%、中国四国56.7%、九州55.9%という結果になっている。

地方では都市部と比べて就職口が少ないといわれているが、それ以上に地元で就労してくれる学生を探している現状がある。地方の採用については、地元で就職したい学生のニーズをとらえる一方、企業側としてもその地方に根付くコア人材を採用できるメリットもある。

そんな中で今年は、地方学生をターゲットにした採用の取り組みも盛んに行われた。会社説明会のネット配信中継がそのひとつ。東京などで行われる合同企業説明会や会社説明会に参加できない学生のため、ネット環境でどこでも視聴できる会社説明会が多く開催されていた。

マイナビは3月1日の解禁初日の合同企業説明会を「マイナビWEB就職EXPO」と題して、ネット中継による説明会をメインにしたイベントを開催。「地方の学生さんは、都心に足を運ぶのにコストも時間もかかるし、そもそも情報も少ない。そこでスタートダッシュできるようにすることを目的に開催した」(マイナビHRリサーチ部・栗田卓也部長)。

それ以外にも、各就職情報会社や地方の商工会議所が主催するUターンやIターンの就職セミナーが、積極的に開催されている。

ゴールデンウイークまでに3分1が内定を取ったといったが、逆にいえば残り3分の2がまだ内定を得ていない状況ということもいえる。いずれにせよ学生にとっては、この1~2カ月がまさに正念場だ。

宇都宮 徹 東洋経済 記者

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うつのみや とおる / Toru Utsunomiya

週刊東洋経済編集長補佐。1974年生まれ。1996年専修大学経済学部卒業。『会社四季報未上場版』編集部、決算短信の担当を経て『週刊東洋経済』編集部に。連載の編集担当から大学、マクロ経済、年末年始合併号(大予測号)などの特集を担当。記者としても農薬・肥料、鉄道、工作機械、人材業界などを担当する。会社四季報プロ500副編集長、就職四季報プラスワン編集長、週刊東洋経済副編集長などを経て、2023年4月から現職。

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