「アマゾン1円詐欺」の巧妙で抜け目ない実態 購入者の個人情報と嗜好が盗まれている

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ここで問題なのは、詐欺に遭った購入者の支払分は返金が保証されるものの、個人情報の流出と、それに伴う被害(自分の個人情報を詐欺業者のデータとして使われるなど)に関してはまったくフォローされていないことだ。

もちろん、返金を負担し消費者の損害を相殺するアマゾンも被害者としての側面がある。悪質業者が入っていることによって得られるメリットなど何ひとつない。

しかし、アマゾンにも加害者としての側面はある。アマゾンのシステムを用いて商品を購入した結果、個人情報が漏れたり、詐欺の片棒を担いだような形になってしまっている利用者からすれば、「アマゾンの対策が行き届いていないからだ」と矛先を向けたくなるだろう。

一方、利用者の自己責任という言い方もできる。販売者のプロフィールや評判をきちんと確認せずに購入手続きを行った利用者にも責任の一端はあるというわけだ。確かに「1円」などのありえない価格を信じた結果による被害と考えれば、そうした意見にも説得力はある。しかし、中古書籍などでは1円販売が現実に存在しているため「ついつい」買ってしまう人が後を絶たないのかもしれない。

極端に低価格な商品は警戒すべき

こうした問題を解決するためなのか、アマゾンはマーケットプレイスへのセラー登録に関して審査のハードルを上げているようだ。それは今回のような詐欺案件が横行しているのに加え、コピー商品をあたかもオリジナル商品のように販売する業者もいるからだ。

利用者側としては、今回紹介したような業者がいることを念頭に、極端に低価格な商品に対しては「ありえない価格だからおかしい」と警戒するほかない。安価な商品には理由があるはずだ。その理由が明らかにされていない場合、もしくは納得できない場合には手を出すべきではない。

このような詐欺業者が今後も横行し続ければ、プラットフォーマーとしてのアマゾンに疑問符を投げかけざるをえない。現在は盤石の体制を誇るアマゾンだが、よりよい解を見つけられないようであれば、ユーザーはもちろん、アマゾンマーケットプレイスに参加する企業からの信頼を失うことになる。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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