ショッフェル

「オフライン」がもたらす、凄いリラックス 欧州人気ブランドが掲げる哲学に触れた日

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日々、激務に追われるビジネスパーソンこそ、PCやスマホ、満員電車から解き放たれ、自然の中に身を置く時間が必要ではないだろうか。古くからワークライフバランスを重視し取り入れてきた欧州。その欧州で200年以上の歴史を持つアウトドアブランド「ショッフェル(Schoffel)」が、その考え方を形にするイベント〈オフチャレンジ™〉を開催した。〈オフチャレンジ™(以下オフチャレ)〉とは、スマホなど「常に身近にあるデジタル機器の電源をオフ」にして一日を過ごすという試みだ。当初は考えられなかった心地よさを、その日は与えてくれた。

スマホを取り上げられ、
自然の中にただ放り出されるイベント?

オフチャレのコンセプトは、日常とは異なる場所に身を置いて「何もしない」というものだ。

当初、参加者の多くが戸惑うほどそのコンセプトはシンプルでつかみどころのないものだった。大型連休を目前に控え、多くのビジネスパーソンが慌ただしく働く平日。都会の喧騒とはかけ離れた、のどかなキャンプ場。雲ひとつない快晴の天気のなか、そのイベントは実施された。

オフチャレ専用の電波遮断スマホケースに入れてイベント開始!言わば完全なリラックスへのパスポート!

一抹の不安。なぜなら、事前に伝えられているのは「アウトドアで何もしないイベント」ということだけ。「何もしない?」。しかも、参加者は強制的にスマホを取り上げられるという。

つい先ほど、ちょっとしたトラブルのメールが届いたばかりだ。その返信は終わらせたが、まだ予断を許さない。こんな状態で夕方までスマホが使えないとは……。

参加者が集められ、主催者から「今日はココロとカラダを完全にオフにしてもらいます。まず、モバイルを断ち切って自然を楽しんでくださーい!」という軽やかな挨拶。そして配られたアンケート用紙(*)を記入し、電波が遮断される専用ケースにスマホを入れて主催者に手渡す。かわりにフィルム式の使い捨てカメラをもらい、投げかけられた言葉は──、

「では、目的を持たず、自然を満喫してください」だった。

Check!


*最初に記入したアンケート用紙は「POMS2(Profile of Mood States 2nd Edition)」と呼ばれるもの。「人づき合いが楽しい」「気がはりつめる」など35の簡単な質問に対し、「なかった」「少しあった」など4つの選択肢から選ぶことで気分のバランスを判定する。心療内科でも使われている検査方法だ。イベント前と終了後に回答することで「緊張・不安」「怒り・敵意」「友好」など7つの尺度を評価できるという。
今回のイベントは、精神科医として活躍され医療系のTV番組にも登場されているブレインケアクリニック院長今野先生に医療面の監修をしていただいた。心と身体をオフにすることで、いったい何が変わってくるのだろうか。。。

自然のリズムに合わせれば、
見えなかったものが見えてくる

さて、まずはキャンプ場内の地図を見る。目的を持つなと言われたばかりだが、すでに地図から何かしらの「目的を見つけたい」自分がいる。

同じように不安にかられた参加者たちとともに、まず神社のような場所があるらしいところに向けて、ぞろぞろと歩き出す。しかし地図にあるはずのその場所は、手前で行き止まりに。何度確認しても正しい道なのに…?「なんだよ!」と思いながら仕方なく戻る道すがら、なぜか何かが吹っ切れたような気がする。始まって30分ほどのことだ。

「なんかなついてるんじゃない?」生き物との触れ合いも目的をつくらないイベントならではだ。

先ほど歩いてきたばかりの道に小さなカエルが跳んでいることに気づく。「あ!そこにも、ここにも、小さなカエルが!」。参加者のひとりが捕獲。非日常がすぐ目の前にあることで気持ちも表情も変わってくる。すこしずつ自然のリズムと自分のリズムが合ってきた感覚を覚えた。

ふと目線をあげて遠くを眺めれば、風景がハイビジョン映像のように浮かび上がって見える。「あそこの川に行ってみよう!」。ちょうどいい長さの棒を見つけ、子どものように軽く振り回しながらのんびりと歩き出す。さまざまな鳥の声がそこかしこから聞こえてくるのに、ウグイスと鳩しか判別できない自分を悔やんだり。

「どうせスマホもないし、メールなんて終わってから確認すればいいや。とにかくこの時間を楽しもう!」。そう考えた瞬間から、すべてがうまくいくような気分になっていく。

自然環境にいるからこその結果

昼食を終えた頃には、土手に座りながら今日初めて出会った人たちとの会話も増えてきた。検索するツールを持たないので、盛り上がった会話の真偽を確かめることもなく、結論の出ないトークに花が咲く。「へぇ~、そうなんだ。僕はこんな話を聞いたことがあるよ……」といった感じ。会話のテンポもだんだんゆっくりに。

土手は最高のロケーション。普段ついスマホを見るようなシーンも今日はありえない。

午後は、少し足を延ばして行動範囲を広げてみる。とはいえ、特に目的があるわけではない。木に登ってみたり、ヤギ(キャンプ場で飼われているらしい)との出会いがあったり、普段の生活からは得られない新鮮な体験が、すべて向こうからやってくる。1、2時間も歩いただろうか、心地よい疲れから、思い思いに各人まったりと過ごすことになった。

自然が好きで、キャンプをよく楽しむ人であっても、到着してすぐにテントを立て、夕暮れ前には火を起こして食事の準備をするなど、やることは意外に多い。気づけばヘトヘトになっているということも。今回のように「何もしない」ほうが、より自然を満喫できたと言えるのかもしれない。

Check!


「オフチャレ」で私たちに起きたこと
(監修:ブレインケアクリニック院長 今野裕之先生)

「野外で何もしないという企画を相談されたとき、これはいいなと思ったんです」と、ブレインケアクリニックの今野院長は語る。

「毎日、皆さん目的を持って行動されていますよね。目的があるということは、段取りをして実行しないといけない。そこで脳を使うんです。この企画はそれすらもやめることで、脳を完全に解放することができるんです。

今回、イベントの前後にとったアンケートの結果からは、サンプル数の少なさはありますが、精神的にリラックスできたと言っていいでしょう。2つ要因があると思います。

参加者11人を対象に実施したPOMS2をもとに作成|集計・分析ブレインケアクリニック

ひとつは、デジタルをオフにしたこと。スマホ時代になって扱う情報量や通知によるストレスが飛躍的に増えました。さらにその情報を見るべきかどうかを私たちは選択しなくてはいけません。目に入った情報に対処すべきか、スルーするかなどの選択の連続で、脳は一日中酷使されてヘトヘトになっています。また、ブルーライトの影響で夜中でも脳がじゅうぶんに休まらないという弊害もあります。

もうひとつ良かったのは、自然環境にいたということですね。視覚的に森林などの緑が多いことは、その写真を見るだけでもリラックス効果があるという研究報告もあります。また、自然の中には、都会の中にはない超高周波といわれる人間には聞こえない音が多く含まれています。枯れ葉が擦れるときや、水が流れる時などに発生している音ですね。そういう音は実際に音として知覚されなくても、リラックスしているときに見られる脳波が出現することが報告されています」(今野院長)


なるほど、確かに選択して判断するということは、どんな些細なことでもひと苦労だ。本当はゆっくりと車窓に映る風景を眺めていればいいのに、ついスマホを見てしまう。人によっては、トイレやお風呂にまで持ち込んで、情報の選択や判断を脳に課している。不必要な情報をカットする癖は、普段から身につけておいたほうが良さそうだ。

スマホが無いだけで気づく、自分にとって大事な時間

イベント終了後、参加者たちからは「何も決めずにふらふら歩くなんて、社会人になって初めてかもしれない」、「子どもの頃を思い出した」、「初対面の人もいたのに、こんなにゆっくり会話をしたのは久しぶり」、「スマホを落とすことを気にせず、自由に跳んだり走ったりできた」など、アナログ時代を懐かしむような感想が聞こえてきた。

「何もしない」ということに、誰しも最初は戸惑う。だが、裏を返せば、忙しい毎日の中でもっとも縁遠い作業ということだ。だからこそ、週末のある日くらいは自然の中で「オフチャレ」をして、脳を休め、気分を休めることをおすすめしたい。事実、イベント後のアンケートを記入する面々は、書く内容がぜんぜん違うと驚きの声を上げた。

心とからだのリラックスを取り入れたライフスタイルの提唱、そのための様々なリラックス・アクティビティに最適なウエアを提案するショッフェル。同社の「オフチャレ」は、これからも定期的に実施していく予定だ。“真”のリラックスを体験できる機会がまた訪れるだろう。

さあ、一切のデジタルをオフにして自然に触れてみよう。
次回開催の「オフチャレンジ™」情報はこちらで!

ちなみに、スマホが返却された瞬間、ピコンピコンと受信の音が鳴り響いた。しかし、仕事に支障が生じるメールはゼロ。結局、どうにかなったという訳だ。