日本人の多くが考えていない有事の資産防衛 北朝鮮危機で起こる最悪事態を想定してみる

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いずれにしても、実際に戦争が起きたときには、現金にせよ、地金や地金型金貨にせよ、そうそう多額の資金は持ち運びできない。銀行や証券会社に預金や有価証券という形で保管してもらう方法がいちばん安全と言って良いだろう。そういう意味では、タンス預金は向いていない。あくまでも平時の資産管理法だ。

もっとも戦争が終わるまでは、キロ単位の金の延べ板などを持っていても換金してくれる業者や人がいるかどうかが心配だ。地金型金貨なら10分の1オンスから4分の1オンス、2分の1オンス、1オンスといった単位の金貨を持って移動できる。資産を装飾品として身に付けることができるのも金やプラチナの強みだ。

海外の口座へ資産を移しておく方法も

この他、自分の財産を戦争の起きないような安全な地域に移しておきたい、という人もいるだろう。全財産というわけではないが、4分の1とか3分の1程度の資産であれば、海外の口座に移しておく、という方法もある。最近では、すべて日本語で対応してくれる日系銀行が香港に誕生している。

ただし、海外口座の場合は、世界情勢の変化にも要注目だ。北朝鮮と米韓が全面戦争になった時に中国がどんなスタンスを取るのかで、世界情勢はまたがらりと変わる可能性がある。

戦後のインフレを見越して、不動産投資を考える人がいるかもしれないが、不動産投資はあくまでも投資する地域や国が戦場にならないことが重要だ。第2次世界大戦終了直後、ホテルや旅館といったインカムゲインが期待できる物件を買い漁って、財産を築いた新興富豪がいたと言われるが、その手がいまも通用するかどうかは不透明だ。

トランプ米大統領は、アメリカファーストというよりも「トランプファースト」と考えればわかりやすい。自分の支持率を上げるためなら、戦争でも何でもする可能性が高い。覚悟だけはしておいたほうが良いのかもしれない。いまこのタイミングで何ができるのか……。簡単にまとめておこう。

1.いつ何があるかわからない状況になった時は現金を多めに手元に置く
2.金やプラチナなど、換金性の高いモノを保管しておく
3.万一の金融機関閉鎖、預金封鎖に備えをしておく
3.株式、債券は市場暴落の可能性を考えてポジションを減らす
4.戦後インフレに警戒して金(モノ)や米ドル(外貨)に分散投資する
5.余裕があれば海外口座を開設しておく
岩崎 博充 経済ジャーナリスト

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いわさき ひろみつ / Hiromitsu Iwasaki

雑誌編集者等を経て1982年に独立し、経済、金融などのジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立。雑誌、新聞、単行本などで執筆活動を行うほか、テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活動している。『老後破綻 改訂版』(廣済堂出版)、『日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔泳社)、『「老後」プアから身をかわす 50歳でも間に合う女の老後サバイバルマネープラン! 』(主婦の友インフォス情報社)など著書多数。
 

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