仏大統領選、実は「極右vs既存政党」ではない

マクロンは19世紀のティエールに似ている

マクロン候補の当選可能性が高まったが……。(Photo by Antoine Gyori/Corbis via Getty Images)

マルクスは『共産党宣言』の有名な冒頭の句でこう述べた。「ヨーロッパではひとつの亡霊がうろついている。それは共産主義の亡霊である」と。しかし、現在の亡霊は、極右勢力と言い換えたほうがいいかもしれない。

19世紀の共産主義という言葉は、既存勢力が力を得るためのいわばダシに使われた。現在の極右勢力への恐怖も、ひょっとするとそうした類のダシかもしれない。マルクスはこの言葉の後で、しっかりとこう述べているのだ。「旧いヨーロッパのすべての権力はこの亡霊に対して神聖な取締を行うべく団結している」と。

現在の旧い権力も、極右勢力や極左勢力を批判しながら、力を集合させ、結局、権力を維持することになるだろう。

極右勢力対既存政党の戦いではない

さて、4月23日に実施された、フランス大統領選の第1次投票をどう見るか。結果は、中道独立系候補のマクロン前経済相と極右政党・国民戦線のルペン党首が決選投票に進んだが、これを当然の結果と見るか、それとも極右勢力に対する大成功とみるべきか。5月7日に行われる決選投票を睨んで、後者として考えたいところだ。しかもマスコミはこぞって、極右勢力の脅威という文句を繰り返している。

しかし、すでに前回述べたように、今回の選挙は、既存政党と新しい政党との闘いという点で、きわめて興味深い結果を残したのだ。共和党の候補も社会党の候補も最終選挙に残れなかったというのは異例のことであり、さらにいえば、第4位につけたメランションですら共和党のフィヨンに迫る票を獲得し、第5位の社会党のアモンにいたっては5パーセント台で第6位の泡沫候補にほとんど並ばれているという現状である。

当然ながら、機を見るに敏な人々は、すでに反極右という御旗を立て、マクロンへの投票を呼びかけている。しかし、これは実質的には勝ち馬に乗り、少しでも利益を確保しようという動きにすぎない。この動きは、すでに1月から始まっていた。

社会党の一部は堂々とマクロンに投票すべきだと主張し、社会党の幹部と袂を分かっていたし、とにかくオランド大統領自身がそうだったからである。マルチーヌ・オブリ(マロン支持)対セゴレーヌ・ロワイヤル(マクロン支持)という女性の闘いの構図を見れば、一目瞭然のように、それは2011年の社会党選挙の対立をそのまま転写したものであった。

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