Tモバイルは、なぜ驚異的な成長を遂げたのか キャリアの常識を「壊す」戦略を実施

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「Adobe Summit 2017」の基調講演に登壇したTモバイル・デジタル担当上級副社長、ニック・ドレイク氏(筆者撮影)

日本では、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクが、いわゆる「3大キャリア」として、日本の携帯通信市場を寡占している。スマホ時代になって、かつての強みだった独自端末は「ガラケー(ガラパゴスケータイ)」と揶揄されるようになったため、日本のサービスは劣っていると勘違いしている読者もいるかもしれないが、実はそうではない。米国で暮らしていると、日本の3大キャリアのサービス、ビジネスモデル、インフラは、「今でも米国の10年先を進んでいる」と思うことが多々ある。

孫正義社長率いるソフトバンクは、ボーダフォンから改称して新しいブランドとして出発したキャリアだ。必ず他社より有利なプランを提示すること、シャープなどのメーカーと組んで魅力的な新しい端末を投入してきたこと、そしてアップルのiPhoneを日本でいち早く導入したことなど、数々の特筆すべき取り組みを行ってきた。

日本のためにiPhoneに導入した絵文字は、Unicode化され、世界共通の非言語文字「Emoji」として流通するようになった。これも、本を正せば、ソフトバンクの功績と言ってもよいかもしれない。

そんなソフトバンクは、当時、米国第3位だった通信キャリアのスプリントを、2013年7月に216億ドルで買収した。その後、ソフトバンクが買収しようとして米連邦通信委員会(FCC)に反対され断念したのが、2013年当時第4位だったT-Mobile US(以下、Tモバイル)だ。

「iPhone」の取り扱いで急成長

Tモバイルはそれまで、プリペイドを中心としたキャリアだった。プリペイドとは、コンビニやオンラインで通信料金をその都度チャージしながら使うタイプの回線であり、日本で一般的に普及している月額料金制(ポストペイ)と区別されている。

Tモバイルは2013年にiPhoneの取り扱いを開始し、スマートフォン時代を見越した投資、つまりデータに強いインフラ作りを行うことで、都市での満足いく通信速度と、大胆な販売施策を採ることができるようになった。そうしたチャレンジを行う姿勢は、iPhone取り扱いを先駆けたソフトバンクと重なる部分がある。そして、結果も現れている。

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