夫の隣で起業する30代女子の「小さな野心」 人生100年時代こそ目の前の現実に疑問符を

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ところが、彼を支えながら働くということを考えたとき、彼の仕事柄、転勤や引っ越しが多いということに突き当たりました。就職してOLになっても、彼がチームを移るようなことがあったとき、私は会社を辞めなくてはならない。ローカルの場所で頑張っても、リセットになってしまう人生は嫌だなと。そうすると、私に思いついたのは、起業しかなかったんです。起業なら、螺旋(らせん)階段のように緩やかでも、上がっていきつつ、自分の人生を彼の隣で作ってゆけるかな、と。

これが私の始まりなんです。せっかくだから、今から始めることをどう続けていくのかを考えていきたい。当たり前のように時間が続いていく、恵まれた長寿の時代だからこそ、リセットするよりも「続いていくもの、続けていくもの」として考えたほうが、今日を楽しめるようになると思うのです。

「エクスプローラー」のススメ

『ライフ・シフト』には、卒業後すぐ就職せずに、自分探しの旅をしながらおカネを稼ぐという「エクスプローラー」の生き方を選ぶジェーンという女性が登場しますが、まさに私もそうでした。

起業するまでの期間は「何をすればおカネをもらえるんだろう?」とひたすら模索し、とにかく名刺を持って「自分ができることをやってみたい!」と営業して回る日々。チャンスがあればプレゼン資料を作って持ち込みました。お店の倉庫に売れ残っていた商品をアウトレット販売するプランを考えたり、鶏肉屋さんとコラボして、コラーゲンから化粧品を作る企画を立ち上げたり。

収入的にはまったく割に合いませんでしたが、何もなかったところに価値を作っておカネをもらうというのは、就職しなかった自分にとっては社会人としての貴重な第一歩でしたし、この体験によって、人がどういうことに価値を感じておカネを払うのかというポイントもわかるようになりました。また、自分は20代・30代の女性に強いという傾向も見えてきて、女性向けシェアハウスなどのプロデュースを引き受けるようにもなり、法人起業に至ったのです。

しかしあるとき、自分の仕事の限界を感じました。今は自由にやれているけど、このままでは私が出産するときや何かあったとき、せっかくやってきたことが全部止まるな、リセットされてしまうなと。その頃は、まだ自分の勘だけに頼っていて、仕事の再現性がなかった。

そこで、スタッフと共有するために打ち立てたコンセプトが、それまでの活動で見いだしていたユーザーを動かす方程式――「次の週末」にどこに行きたくなり、何を欲しくなり、何を食べたくなるのかを提案する「NEXTWEEKEND」の考え方なのです。これをブランドにしよう、と。そこからウェブサイトや動画、雑誌、『週末野心手帳』などが生まれていきました。

私は、女性こそ起業に向いていると思っているんです。女性はやっぱり、結婚、出産とライフステージごとに大変なハードルがあって出遅れますし、夫の仕事に合わせるのは妻の役目とされる風潮もあります。でも私自身、夫の転勤に合わせながら、自分で環境を作って仕事をしてきましたし、女性がこういったライフステージの変化に沿った働き方を自分で考えられるようになって、それを男性が理解できるようになってこそ、男女が対等になるのではとも感じています。

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