ダイエットの味方?「太りにくいお酒」は何か 適量ならば肥満につながることはない

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青年やそれ以上の成人の場合、アルコールは摂取量に関係なく肥満や高い体脂肪率につながる可能性があると指摘する研究も一部にはある。

一般的にクロスセクション研究よりも正確とみられ、集団を長期間追跡するプロスペクティブ研究についても分析がされている。数カ月~20年にわたる研究の結果はさまざまで、アルコールと体重の関係性に明確な結論は導き出されていなかった。少なくとも女性の場合、両者は無関係か後ろ向きの関係性はないとする研究も複数ある一方で、飲酒をする男性は肥満のリスクにさらされる傾向があり、特にビールを飲む人にそれが顕著だとする研究もある。

最新の研究では、過度の飲酒をする人は体重が増加し、「軽度から中程度のアルコール摂取は、体重の増加もしくはウエストサイズの変化と関連性がない」と結論づけている。

ビールはビールでも、カロリーに大きな差

シャプーが「最も信頼できる」「最も有力な証拠を提示している」と評価したのは、被験者に監視下でランダムにアルコールを摂取してもらった実験だ。そのうちの1つの実験では、男性14人が毎日夕飯に赤ワインを2杯、6週間飲み続けたところ、アルコールを飲まずに同じ食事と運動をした場合に比べて、体重は増加しないか、体脂肪率の大きな増加も見られなかった。肥満で運動量の少ない女性20人に対する実験でも、ワイン1杯を週5日、10週間続けても大きな変化はみられなかった。

しかし、それらの実験研究は規模が小さく、期間が短い。10週の間のごくわずかな体重の増加でも、食事量を減らすか運動量を増やさないかぎり、5年続けば大きな変化となるとシャプーは指摘している。

タンパク質や脂質、炭水化物と違い、アルコールは体に蓄積されない。アルコールのカロリーは燃焼に使われ、その分その他のカロリー源の消費が減ってしまう。つまりお酒を飲む人とは、体重を維持するには食べる量を減らすか、運動量を増やさなければならないということだ。

男女の飲酒パターンの大きな違いが、アルコールと体重の関連性についての研究結果に影響しているとシャプーは言う。「男性は酒の量が多く、ビールやスピリッツを飲む傾向にあるが、女性は多くがワインを飲み、男性よりもアルコールで摂取した余分なカロリーを消費しようとする」。

さらには、多くの人もわかっているように、アルコールは自制心を低下させる影響があり、食べ物を提供されると食べたくなってしまう。「過剰なカロリーがアルコールとともに摂取されると、脂肪として蓄積される」と、シャプーは飲酒をする人に注意を呼びかけている。

重要なのは、人はみなそれぞれ異なるということだ。前述した研究は、集団の結果を平均化したものであり、個人ごとの違いは見過ごされている。また、体重管理にはセルフチェックも重大で、毎日同じ時間に同じ状況で体重を測るといい。

また、似たアルコール飲料でもカロリーに大きな差があることを示す資料もあり、体重管理の参考になるかもしれない。米非営利団体(NPO)公益科学センターは最近、そうしたリストをウェブサイトで公開した。「カロリーが最も高いアルコール飲料は?」という項目を見ると、白ワインと赤ワインではカロリーに違いがない一方で、ビールはブランドによって340グラム当たりのカロリーが55~320カロリーと差が大きいことがわかる。

(執筆:Jane E. Brody記者、翻訳:中丸碧)
© 2017 New York Times News Service

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