知っておこう!「独学」で進むための思考法 自らを「主人公」にして勉強する真の価値

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鬼頭毎年多くの勉強に関する本が出版されていて、どの本も最終的に言いたいことは同じだと思っているのですが、山登りのルートと同じで、目標までのルートというか書き方がさまざまあって、読者への伝わり方も違うのかもしれないですね。

柳川そういうことだと思います。本には読み手と書き手の相性があります。内容はどれも大くくりでは同じことを書いているかもしれませんが、自分が理解しやすい書き方かどうかや、迷っているポイントにちょうどいいアドバイスがあるかなど、些細(ささい)な違いが読者からすると重要になってきます。

1963年生まれ。1988年、慶應義塾大学経済学部通信教育課程卒業。1993年、東京大学大学院博士課程修了。経済学博士。1996年、東大助教授。2011年より、東大大学院経済学研究科教授。著書に『東大教授が教える独学勉強法』など(撮影:梅谷秀司)

読者が千差万別であるように、勉強本にもそれぞれ違うアドバイスがあっていいと思います。独学する人にとっては、自分に合ったテキストや参考書を見つけることが大事ですね。

ある意味で恋愛にも似ていますよね。仮に誰かが女性と付き合いたいと思っても、女性なら誰でもいいわけではなくて、自分に合った女性を求めます。それはやっぱり相性でしょうし、同じように勉強本と読者の間にだって相性は存在すると思います。

鬼頭自分に合った勉強方法を探す人が多いがために、毎年継続的に勉強本は売れ続けているのかもしれないですね。

柳川勉強本は「こういうふうに勉強しなさい」とか「こういうパターンがいいですよ」とさまざまな提案をしてくれるので、方法を考えるツールとして継続的に売れ続けているのだと思います。

ただ、なかなか難しいのは、どれが自分にとっていちばんマスターしやすいのか、どうしたら頭の中に入るのかは、簡単にわからない。本を見て「よさそうだな」と思っても、実際にやってみて試行錯誤しないとわかりません。万人に共通した理解の仕方というものが、大きな枠としては存在しているのかもしれませんが、細かいところになると個別に考えなければいけないと思います。

「一度決めた勉強法」に固執する必要はない

鬼頭資格試験受験生の中にも、自分に合うかどうか理解していないのに、「この方法で絶対やるんだ!」と決めて試行錯誤せずにやった結果、合格にたどりつけないというパターンは確かに多いかもしれません。1度決めた勉強法にこだわりすぎるのは、完璧主義の方に多い印象です。

私は資格試験のオンラインサービスを運営しているのですが、試験は日程が決まっていて、そこから逆算して勉強できる期間も決まっています。つまり、試験当日までの限られた時間で、一定水準に能力を引き上げる必要がある。資格試験のように、勉強ができる期間が決まっている場合でも、最初は試行錯誤したほうが良いのでしょうか?

柳川受験勉強をやっている人は、「試行錯誤なんて、怖くてできない」「間違った勉強をして、引き返す時間がもったいない」と感じてしまう傾向があるかと思います。確かに焦る気持ちもわかります。ですが、多少の試行錯誤があるのは仕方がないことだし、むしろ、あるべきだというのが私の考えです。

鬼頭では、どのように自分なりの独学のペースをつかみますか?

柳川さすがに試験前日まで試行錯誤をしていては、ダメですよね。それでは「準備体操だけして終わってしまった」ということになってしまう。試験勉強の場合、スケジュール感は大事です。試験の難しさによっても異なりますが、たとえば最初の1割ぐらいの時間を試行錯誤に充てて、ある程度のところで軌道修正のために、さらに1割の時間を充てるという感じでしょうか。試験日が決まっている場合、スケジュール感をもって「最初のこの期間」と決めるのは大事です。

ただ、それでもある程度は割り切って、試行錯誤の時間をとることをお勧めします。途中で「なんだかこれ違うんじゃないか?」と感じたら、一気にスタート地点に戻るのではなく、少し勉強法を変えてみることもいい方法でしょう。絶えず試行錯誤しながら勉強をする、そのプロセス自体が糧になると思います。

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