韓国の星、サムスングループ「解体」の行き先 司令塔の未来戦略室消え、問われる財閥経営

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サムスングループは李副会長(中央)の逮捕・起訴後のあと、どこに向かおうとしているのか(写真:中央日報エコノミスト)

韓国サムスングループが3月1日付で、これまでグループのコントロールタワーとして君臨してきた「未来戦略室」を解体した。前身のサムスン物産秘書室が設置されてから58年間。未来戦略室の解体は、事実上のグループ体制の解体を意味する。サムスン関係者は「グループレベルで行われてきたすべての業務を終了させる」と説明する。未来戦略室を陣頭指揮してきたサムスンのナンバー2である崔志成(チェ・ジソン)副会長も辞任した。未来戦略室の解体は何を意味するのか。そして、サムスンの次の一手は、どうなるのか。

当記事は韓国の経済誌「中央日報エコノミスト」掲載記事の日本語訳です

サムスンが2月28日付で未来戦略室の解体を公式に発表すると、韓国財界は一斉に困惑の表情を見せた。実は解体は予見されていたことだった。サムスン電子の事実上トップである李在鎔(イ・ジェヨン)副会長(2月28に起訴)は、昨年12月、朴槿恵(パク・クネ)大統領(3月10日に罷免)が深く関わった国政不正介入事件に関する国会聴聞会で、未来戦略室の解体を約束していた。その後、李副会長が同事件における贈賄容疑で逮捕されたため、未来戦略室を当面存続させ、特別検察による捜査への対応に注力するという雰囲気だった。

旧時代的な経営からの脱皮目指す

だが、予想よりも早い解体宣言は、財界に動揺を与えざるを得なかった。主要企業はサムスンの動きを鋭意注視しながらも、検察の今後の対応などを見守る立場だ。経済団体は公式的な発表を自制したまま、財界全般に与える影響を分析中である。一方、サムスンの改革を要求していた市民団体などは、さっそくこれまでとは違った主張を口にし始めた。

韓国財界の”長男”といえるサムスン。その司令塔である未来戦略室の解体は、そのまま財閥改革という意味を持つ。同室はグループ全般の業務に関与し、オーナー一家の手足のように機能しているとの批判をつねに受け続けてきた。特に政府や国会を相手にロビー活動を行ってきたため、政経癒着の張本人として指摘され続けてきた。

今回、未来戦略室を解体したことで、オーナー一家中心の旧時代的な財閥経営から脱皮し、専門経営者らを中心とする企業へ変貌するという強い意志を、サムスン側は見せたとも取れる。サムスン関係者は「未来戦略室の解体はグループ内54社が自律的に経営する体制へと転換することを意味する」と説明する。オーナーによる経営判断への依存度を下げるということだ。延世大学経済部のシン・ヒョンアン教授は「グループ会社別により迅速に判断すべき時代が来た。急変する経営環境にサムスンも勝負を挑むということ」と見ている。

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