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トヨタが挑戦する「水素社会」の今

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地球温暖化、大気汚染などの環境問題は、今や地球規模での脅威となっている。その要因の一つである二酸化炭素(CO2)排出削減は避けては通れない大きな課題だ。
いかに、より快適・安心に、クリーンで持続可能な社会を実現するのか。
問題解決の一翼を担う「水素社会」への取り組みを続けるトヨタの今を追った。

水素ステーションの整備・運営を支援

トヨタが今、燃料電池自動車(FCV=Fuel Cell Vehicle)を推進役に「水素社会」の実現に向けて本格的に動き出している。今年1月には世界の政財界のリーダーが集まる世界経済フォーラム(ダボス会議)において、「Hydrogen Council(水素協議会)」の設立を発表。国際的な運輸・製造業・エネルギー企業13社が中心となり、水素利用を推進する新しいグローバル・イニシアチブを目指す。

さらにダボス会議の直前には、アラブ首長国連邦(UAE)の現地企業などと協力し、同国でFCVの実証実験を行うことも発表している。産油国であり原油生産が基幹産業であるUAE政府は国家ビジョン「UAE Vision2021」のもと、大気汚染の改善、クリーンエネルギーの利用拡大などの環境プロジェクトを推し進めている。トヨタと共同研究を開始することで、ゼロ・エミッションの環境未来都市「マスダールシティ」での水素利用の可能性を探る。

こうした水素社会への動きは今、どのような段階にあるのか。トヨタ自動車広報部の中井久志氏は次のように語る。

「水素社会実現への取り組みはまさに緒に就いたばかりです。自動車メーカーだけではなく、水素ステーションなどインフラの整備のためには様々な業界や政府のバックアップが必要となってきます。現在、日米欧が中心となって水素エネルギーの普及を進めており、今後もさらなるステークホルダーを求め、グローバルな動きを加速させていきたいと考えています」

水素充填車からMIRAIへ水素を充填。トヨタは他の自動車メーカーと共にインフラ事業者への支援も行っている

トヨタはこれまで持続可能な低炭素社会づくりに向け、1992年から水素を利用した環境技術開発を進めてきた。2014年12月には走行時に二酸化炭素(CO2)を出さない「究極のエコカー」として、満を持して世界初の量産型FCV「MIRAI(ミライ)」を発売した。充填した水素と大気中の酸素との化学反応によって発電した電気をエネルギー源にモーターで走るというトヨタの最新技術が詰まった自動車だ。17年には年間販売台数で3000台を予定し、20年以降にはグローバルで年間3万台以上、日本では月1000台レベル、年間1万数千台の目標を掲げている。では、乗用車としてのミライはどうか。実際に乗車してみると、走行音は静かで乗り心地も良く、アクセルを踏み出したときの加速性も高い。もちろん走行時にはCO2ではなく、少量の水を排出するだけだ。水素の充填時間は3分程度、航続距離もガソリン車並みの使い勝手を実現している。

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