北朝鮮を攻撃すればソウルで100万人が死ぬ トランプ政権の「先制攻撃」は絵に描いた餅だ

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3月6日、ソウル市内の駅でミサイル発射に関するニュースをみる人(写真:ロイター/Kim Hong-Ji)

北朝鮮の暴走が止まらない。3月1日から始まった過去最大規模の米韓合同軍事演習に反発し、北朝鮮が6日朝、ミサイル発射を強行した。北朝鮮は、昨年の米韓合同軍事演習の際も対抗措置として、新型中距離弾道ミサイル「ムスダン」を発射するなどしている。今回も同じような挑発行為に出た格好だ。

ただ、今年は様相が違う点がある。今年の場合は、北朝鮮だけが強硬姿勢に傾いているわけではなく、米政権も強硬姿勢をみせている。国連制裁を無視し、核・ミサイル開発を続ける平壌に対し、直接対話の可能性は排除してはいないものの、米国は軍事オプションをちらつかせ、このところ、ぐっと北への圧力を強めている。

しかし、こうした米国の強硬姿勢は、核の非核化や開発凍結に向けた譲歩を引き出すための、一種のブラフ(脅し)に過ぎない。実際の軍事力行使はさまざまな理由から事実上、不可能だ。

米国が検討する軍事オプションとは?

3月1日付の米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)によると、トランプ政権は、北朝鮮の核ミサイル開発をほとんど放置してきたオバマ前政権の「戦略的忍耐」の方針を見直し、北朝鮮への軍事攻撃や体制転換を含めた「あらゆる選択肢」を検討しているようだ。特に、北朝鮮が米本土への攻撃が可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験に踏み切ろうとした場合、北朝鮮を先制攻撃する軍事オプションも含んでいるという。

この意味で、6日朝に発射されたミサイルが仮にICBMであったならば、それが北朝鮮に対して、米国が定めた「レッドライン」(越えてはならない一線)となった可能性があり、トランプ政権は金正恩朝鮮労働党委員長に早速、軍事オプションの本気度を試される一大事となるところだった。金正恩氏が1月にICBMをいつでも発射できると主張した際、トランプ大統領はツイッターで「そうはさせない」と述べていたからだ。

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