先日、ビジネススクールのグロービスが年に1度開催している全校挙げてのイベント「あすか会議」で、「仏教とマネジメント」というテーマのセッションを担当させていただきました。
グロービスに通われている意識の高いビジネスパーソンの方々とも、さまざまな対話をさせていただいたのですが、ある方がこのような質問をされました。
「自分がこれまでお話を聞いたすばらしい経営者の皆さんが口をそろえて言うのは、“リスクを取れ”ということです。それはつまり、とにかく失敗を恐れず挑戦しろということでしょうか?」
”リスク”の本当の意味とは
いかがでしょう。トップ経営者の方々が「リスクを取れ」というメッセージで言いたかったことは、とにかくリスクの高い事業に挑めということでしょうか? とにかく大きなリターンを目指して起業すればいいということでしょうか?
私はそうではないと思います。リスクとは一般に、「ある行動によって危険に遭ったり損をしたりする可能性」です。「リスクを取れ」というのは、何でもいいから大きな一歩を踏み出せということではありません。
踏み出す前に、まずしなければならないことは、「自分は今、そしてこれから、どういうリスクにさらされているのか」を知ることです。今、置かれている現実を知らなければ、リスクを取りたくても取ることなどできません。ただ自分の身を危険にさらすということなら簡単です。鍵をかけずに外出するとか、人気のない夜道を歩くとか、やろうと思えばいくらでもできるでしょう。しかし、トップ経営者の方が言っているリスクは、そういうことではないでしょう。自分なりに現実の状況を把握して、将来の成功への道筋を見いだしたうえで、挑戦しろと言っているのです。
もちろん、絶対に成功すると思っていたことが失敗することもあります。そんなときは何度でも立ち上がればいい。しかし、失敗するために立ち上がるわけではないでしょう。
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