早稲田大学

イノベーションに向けたリーダーが誕生

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複数の課題が複雑に絡むエネルギー問題など、グローバルイシューの解決に挑戦できる理工系博士人材を育成するため、「専門力」「俯瞰力」「進取力」を総合的に習得していく独自のプログラムを開発

「専門力」は、将来世代のエネルギー科学技術を物理・化学・電気電子・生命科学等の横断的学問領域であるエネルギーの理工学という軸で学び、それを学生自身の専門分野に結びつけることで、複合的な研究にも柔軟に対応できる力を身に付ける。

「俯瞰力」は、ジャーナリズムコースや、価値創造プロセスのマネジメントを学ぶスーパー・テクノロジー・オフィサーコースなどの文理融合、産業界有識者の講義など産学連携を通じ、社会と自身の研究の関係を見つめ、つなぐ能力を養う。

「進取力」は、海外研究機関との共同研究や企業インターンシップ(各3カ月、必修科目)を通じ、多様な人々と信頼関係を築きながらチームでの作業を体験。イノベーションに欠かせない異分野の人との協働を推進する力を培う。

こうした幅広い基盤は、社会の中で環境の変化に対応しながら長く活躍することが期待される人材にとっては重要な力だ。実際、企業の研究部門に採用された技術者が、その一生を研究者として過ごせるとは限らない。年齢を経るとともに、組織の上層部で活躍されることが期待されるようになり、上司として自分の手を動かさずに、周りの人を上手に使うことも求められる。

青木氏は「組織をリードするセンスを身に付けるには、インターンシップなど多彩な経験を積むことによる人間的な成長が大切です」と、三つの力に象徴されるリーディングプログラムの多彩な履修内容を評価。特に「一歩引いて自分が取り組んでいる研究の意義や、これから向かうべき方向を大局的に考えることができる」(青木氏)俯瞰力や主体性の重要性を強調する。

5年一貫の多忙な道にあえて挑む覚悟に期待

自身の軸として専門分野に深い知識を持つ一方、周辺領域に幅広い知見を持つT型人材の育成がリーディングプログラムの目的と考える青木氏は「リーディングプログラムで学んだ学生が、これから社会に出て、どんな活躍を見せてくれるのか、高い関心を持って見ています」と話す。

採用面接にも関わっている青木氏は入社が内定している早稲田のリーディング理工学博士プログラム1期生の宇田川さんについて「メールでのやりとりや面接を通じて、コミュニケーション力や自身の力で道を切り拓こうというモチベーションが高く、専門性のみならず幅広い能力を備える人材だと感じました」と振り返る。昨年末にプログラムの後輩学生を連れて意見交流のために三井化学を訪問した際の企画力や行動力も評価する。

青木氏が特にリーディングプログラム履修者に関心を持つ理由が、気持ちや意志の部分だ。リーディングプログラムは、難関である博士号取得に向けた専門分野の論文と並行して、グローバルリーダーとしての能力を養うための授業やインターンシップにも多くの時間を割かなければならない。文科省の支援事業は最大7年に限定されているが、早稲田大は、2014年に5年一貫制の先進理工学専攻を新設して、プログラムを継続的に運用する仕組みを整えた。

しかも5年一貫制にしたことで、中退でも通常は前期2年間の修士課程を修了すれば得られるはずの修士号は取得できない。青木氏は「それでもあえて大変な道を選ぶモチベーションの高さ、覚悟を含めた強い意志が、リーディングプログラムの学生にはあるはずで、そこには大いに期待しています」とエールを送る。

お問い合わせ
早稲田大学リーディング理工学博士プログラム
 http://www.leading-en.sci.waseda.ac.jp
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