SL列車での感動結婚式は「特別」が満載だった 「日本で唯一」旅行会社と鉄道会社が共同企画

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その理由はすぐにわかった。

手前にももっと大勢の人がいた。ひときわ大きく旗とうちわを振っているのがサヨばあちゃんだ(筆者撮影)

抜里駅に列車がさしかかると、たくさんの人たちが「おめでとう!」と言いながら、黄色い旗を振っていた。手作りの大きなお祝いパネルも見える。抜里駅には「サヨばあちゃん」という昔からこの無人駅を大切にしてきた方がおり、1回目のブライダルトレインの時から、なんと有志で看板を作ったり、旗を振ったりしてくれていたのだという。温かな歓迎に、じんわりとくるものがあった。

列車は地名(じな)駅で対向列車とのすれ違いのため一旦停車した後、終点の千頭駅へと到着。ここでは転車台の前で集合写真を撮影するなど、しばしの時間を過ごすことになる。そして今回は特別に、牽引する蒸気機関車もここで交代する。

あっという間に集合時間になると、3番線ホームに、往路とは違う蒸気機関車のC56形44号機が入ってきた。今度はその前でケーキ入刀だ。

SLの前でケーキ入刀!

復路のブライダル列車を牽引するC56形44号機の前でケーキカットする新郎新婦(筆者撮影)

カットするケーキは、チョコレートでできたかわいい蒸気機関車が乗っている特注品。その後、二人で機関車の運転台で幸福祈願としての汽笛吹鳴が行われた。あまりの音の大きさに、参列者も私もみな驚く。C56形44号機は戦時中にタイに渡り、戦後海を渡って再び日本に帰ってきた強運のSL。そのような意味合いで、この機関車での汽笛吹鳴が夫婦の幸福祈願となっているらしい。

新郎新婦が機関車の前でカットしたケーキはお座敷車の各席に用意され、列車は新金谷駅へ向けて出発。復路では、往路で通過した抜里駅で停車し、サヨばあちゃんや地元の方々から歓迎を受けた。

抜里駅で黄色い旗を振ってくれていた方々の中には、なんと、かつてこのブライダルトレインで結婚したカップルも厚意で参加しているという。この企画に申し込むと、1組目の夫婦が2組目に、2組目の夫婦が3組目に……という風に、アドバイスや相談などで連絡を取り合うとのこと。そして新たなカップルの結婚式で、全員集合してお祝いするというのである。これから式を挙げる方が増すごとに、お祝いする人数も増えていくのだ。なんとも素晴らしい習慣である。

列車はさらに家山駅で一時停車。ここでは名物のたい焼きが積み込まれ、配膳された。その後は車内放送で、新郎新婦からご両親への手紙朗読などが行われた。

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