電通、「働き方改革徹底」への高いハードル 人的資源の補充に25億円を投じるが…

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電通本社は22時で全館消灯となる。労働環境改革はこれからが本番だ(撮影:尾形文繁)

東京オリンピック招致にかかわる裏金疑惑が浮上し、デジタル広告で未掲載など不正取引が発覚。さらに、新入社員の過労自殺は多方面から批判がなされ、社会問題に発展した。2016年は電通にとって試練の年だった。

イメージダウンなどで苦戦しているのではと思いきや、業績は良好だ。2月14日に電通が発表した2016年12月期の決算は、収益が8383億円、営業利益は1376億円、純利益は835億円となり、過去最高益を更新した(前2015年12月期は決算期変更に伴い9カ月決算だった)。

国内事業の売上総利益は前年同期比4.3%増(2015年1~12月の実績と比較)の3632億円と伸長。前半は五輪スポンサーシップの販売が寄与している。媒体別では新聞や雑誌がマイナスとなったが、主力のテレビは出稿が多く、タイム、スポット広告共に伸ばしている。ネットメディアも引き続き好調だった。調整後営業利益は同7.7%増の973億円だった。

一方、海外事業の売上総利益は同2.9%増の4260億円。「欧州・中東・アフリカ」と「アジア太平洋」は円高の影響でマイナスに沈んだが、「米州」は同14.8%増と大幅に伸ばした。昨年に獲得したグローバル企業の案件や、米データマーケティング会社「マークル」買収などM&Aの寄与があったためだ。調整後営業利益は、オフィスの統合など費用が増えたことで同1.6%減の690億円となった。

今期は600億~800億円のM&Aを実施

そして今2017年12月期は売上総利益が17.8%増の9295億円、営業利益は10%増の1515億円、純利益は3.7%増の866億円と、さらなる増益を計画している。牽引役となるのは海外事業だ。

海外全体では、売上総利益で33.6%増、調整後営業利益で27%増を計画している。まずは昨年に実施した計45件のM&Aの寄与がある。前述のマークル社がフル連結となるなど、買収が多かった米国が大幅に伸びる。アジア太平洋も豪州やインドが好調だ。為替の円安基調もプラス材料になる。

2月16日に行われた決算説明会で、ティム・アンドレー取締役は「2017年も(全世界で4%と見込まれる)市場成長率の倍を達成し、競合他社を上回る。買収したマークル社の能力を米国以外の市場でも提供していく。競合プレゼンなどによる新規契約も増えるだろう」と意気込んだ。

さらに、中本祥一副社長は「今期は600億~800億円程度で(デジタル領域を中心に)買収を進める」としており、期中に連結するケースが多くなれば、海外事業の規模は一段と拡大しそうだ。

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