三陽商会、過去最大の赤字から復活できるか ビル売却めぐりトラブル、資産活用にも課題

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新ブランドは、エントリーモデル的な意味合いで、既存商品に比べ2割程度低い価格帯を想定。バーバリーのようなライセンスビジネスでの展開は現時点で考えておらず、自社のオリジナルブランドとしての立ち上げを模索している。

オリジナルとなると、自社内での高い商品開発力が求められる。三陽商会は青森県に世界最高水準の技術力を誇るコート専用の自社縫製工場「サンヨーソーイング青森」を保有しており、業界内での評価も高い。だがそれにより、良いモノを作れば売れるという職人気質的な雰囲気が醸成され、顧客のニーズを探るマーケティング力を高める妨げにもなっていた。岩田社長は、保守的な体質を自社の課題に挙げており、企業マインドそのものを変える必要もある。

ビル売却をめぐってトラブル

トラブルとなった乃木坂の物件(記者撮影)

2015年の夏まで過去半世紀にわたってバーバリーとともに歩んできた同社にとって、他社ブランドに依存せず生きていくのは至難の業だ。しかし、早期に黒字化を達成しなければ、バーバリーの販売で蓄積してきた純資産495億円(2016年度期末時点)を早晩食い潰すことにもなりかねない。

同社は、東京都港区の乃木坂駅近くの一等地にビルを保有。実は同物件に関しては、2016年12月上旬、購入を希望していた個人の適性に問題があることが判明して交渉を打ち切った経緯がある(2016年12月31日に社長を辞任した杉浦昌彦前社長とその個人との関係については、今年1月6日に特別調査委員会を設置し、3月中旬頃の結果の公表を予定している)。

現在は問題の個人とは一切関係ないところで、優良資産である同物件の"有効活用"を検討しているという。財務体質が毀損する中、本業以外でも課題は山積みだ。

ようやく再建計画の発表にこぎ着けた同社。しかしいまだ再建の道筋が見えたとは到底いえない。当面は厳しい舵取りが続きそうだ。

菊地 悠人 東洋経済 記者

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きくち ゆうと / Yuto Kikuchi

早稲田大学卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者を経て2017年10月から東洋経済オンライン編集部。2020年7月よりIT・ゲーム業界の担当記者に。

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