TK流目標達成術
~ひとつのことに集中していたら、
きっと僕はダメになっていた~

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音楽業界で長くヒットメーカーとして活躍している小室哲哉氏だが、デビュー当初はなかなか芽が出ず、悩んだ時期もあったという。そうした中で、小室氏は目標を実現するための方法論に出会う。それは「職種を二つ持つ」ということ。これは、新しい一歩を踏み出したいビジネスパーソンへの助言でもある。

これから新しいものが始まるという兆しがあった

――2月に「目標一筋のためには、二つの戦略」というタイトルで講演されます。小室さんも音楽業界で二つの戦略を立てていたのでしょうか。

小室 音楽活動を始めた頃は必死でそんなことは考えていませんでした。結果的に、二つの戦略、あるいは二つの職種がないとダメだと思うようになったということです。

小室哲哉
音楽家。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家、編曲家、キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、ミキシングエンジニア、DJ

アーティストは一度成功すると、ファンはずっと変わりません。なぜかといえば、ファンはそのスタイル、その世界観が好きだからです。しかし、アーティストはつねに新しいファンを開拓しなければなりません。違う曲、新しいスタイルでやりたい。しかし、そうすれば既存のファン、既存のマーケットを逃すというリスクも出てくる。結果として、一つのことをやり続けなければならなくなるんです。つまり、一つのことをやりたいのではなく、一つのことしかできなくなってしまう。

だからこそ、職種を二つ以上持つことが重要になってきます。たとえば、アーティストと俳優ならば、それぞれついてくるファンは異なってきます。むろんファンはまったく違うというわけではありませんが、違う層のファンを獲得できる。違う職種を持つことで、マーケットは拡がります。つまり職業欄に、職業を二つ以上書くことができると、結果として自分のビジネスも拡がっていくわけです。

――では目標はいかがでしょう。小室さんは音楽業界に飛び込む時に、どのような目標を立てていましたか。

小室 僕の時代は目標が立てやすかったですね。「あんな人になりたい」という明確な目標となるアーティストがたくさんいました。僕がデビューした1984年は、ちょうどJ-POPがこれから伸びるという時期。歌謡曲からポップスへ。自分で曲をつくって、自分で演奏する。いわば、自分で考えたものすべてを皆さんに提示して、それが仕事になるという時代が始まったときでした。

夢はすごくありました。新しいものがこれから始まるという兆しが見えていた。音楽業界においては、今より非常に夢を持ちやすい時代だったことは間違いありません。レコード会社の存在も今より大きく、第一目標はレコード会社に認められることでした。そこをクリアすれば、成功する道が開ける。わかりやすい成功へのステップがあったんです。

――目標を実現するまでに、どんな苦労がありましたか。

小室 実はデビュー後の一年は、なかなかうまくいきませんでした。当時のレコード会社にはシングルを三枚出して売れなかったら契約延長はないという暗黙のルールがありました。そのため、TM NETWORKも危機意識は高まっていました。

そうした悩みの中で思い至ったのが、自分は作曲が評価されてデビューしたということです。デビューのきっかけは、レコード会社に送った曲だけのデモテープでしたから。そこでレコード会社に「歌謡曲でもいいので何か書かせてください」と曲のプレゼンを始めました。自分のバンドをやりながら、曲も書き始めたんです。

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